冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~

『一宮グループ令嬢と正義の弁護士のロマンス』

 そんな小さな記事が、ある日密かにネットに流れていった。
 政治家の詐欺と癒着を摘発するために闘う弁護士と、その解決に協力しようとした大手グループの令嬢が恋に落ちたのだという。
 玲はその記事に気づき、くすりと笑った。

「どうしたの?」

 優しく呼びかける彼の顔を見ながら、玲は思った。
 この記事を読んだ人たちは、二人が実はあんな出会い方をしたことも、はじめ彼を絶対に好きにはならない相手だと思ったことも知らない。玲自身も、信じられない。

「なんでもない」

 これほど愛しい人と出会えて、こうして幸せに暮らせるなんて。

「大好き」

 頬に唇を寄せると、彼は子どものような笑顔で笑った。
 そしてまたじゃれあうようにソファに身体を倒される。

 誰も知らないそんな二人の姿を、カーテンから差し込む光が、優しく包んでいた。


Fin.
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