冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~
「もうお前は釣り書きも見なくていい。前みたいなことをされては困るからな。十四時にセザンヌホテルに来い」
「お父さん……!」
「今度余計な真似をしたら、お前の会社に連絡をしたっていいんだぞ。結婚させるので退職させます、とな」
「な……っ」
なんて非常識なことを。そんな連絡、絶対に困る。
「分かった、行くから……!」
額に手を当ててそう絞り出す。
しんとしたリビングで、その冷え切った雰囲気を変えようとしたのか、母が言った。
「玲、久しぶりに、夕食も食べていかない?」
「ごめん、予定があるの……」
そう言って背中を向けた。
母には悪いが、今、顔を合わせて和やかに食事なんかできない。
父が今回ここまでの強硬手段に出たのは、前回釣り書きの情報を見た玲が、勝手に相手に断りの連絡を入れたからだ。
今仕事が辞められる状況ではなく、お会いしてもきっとご希望に添えない。貴重なお時間をいただいては申し訳ない。
そう、精一杯配慮して断りを入れた。
それでも相手と父の顔を潰すとは分かっていたが、一度ここまですれば、馬鹿な娘だと見限って、父も諦めてくれるだろうと思ったのだ。
だが、無駄だった。
(とりあえず、四日は行くしかない、か……)
玲は浮かない顔のまま、実家を後にした。