冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~

 そして、お見合い当日。玲の気持ちに反するような、気持ちのいい日だった。
 玲はワンピースに身を包み、ホテルの前に立っていた。
 ふう、と息を吐き、お見合いに向けてとは決して言えない表情で中に入る。

 できればこの話も流れて欲しい。だが、父がああ言ったことで、玲も追い詰められていた。
 会社と一人暮らしは、玲にとって守りたいものだ。一人の人間としていられる場だと思っている。
 仕事はもちろん大変なこともあるが、自分の足で生きている、という感覚が玲を支えてくれる。

 フロントスタッフに案内され、玲は併設された喫茶店に入った。
 落ち着いた照明に照らされた店内を進み、奥の個室へと案内される。
 父と母の顔が見える。そして、こちらに背中を向ける男性が二人。

(どうにか、気に入られませんように……)

 そういつも願うのだが、変な醜聞が出回り、一宮の事業に影響してはいけないことも分かっている。あまりに突飛な振る舞いをするわけにもいかない。

(せめて、仕事を続けることにだけでも、理解のある人だったら)

 これまで誰一人として、そんなことを許してくれたお見合い相手はいなかった。
 だが、もしかしたら、今回は。

「お待たせいたしま……」

 足を進めて、そうして、相手の顔を見た瞬間。
 玲は息を呑んだ。
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