冷酷弁護士の溺愛~お見合い相手は、私の許せない男でした~


 彼を含めて、あの時結愛の元夫についた者たちを、玲は許してはいない。この男も仕事だったと頭では理解しているが、それでも結愛に対する追い詰め方はひどいものだった。

(でも……)

 彼の隣に座っているのは、玲も幼い頃から知っている、代議士の階堂(かいどう)だ。彼の紹介である手前、下手なことはできない。

「そうか、三十二だと聞いていたから、まさかそんな若くで園池さんの担当をされているとは思わなかったよ」
「伊神くんのお父さんは一代で財を成されていてね。息子の彼は帝都大学を出て弁護士をしている。今時、なかなかいない優秀な男だ」

 恐縮です、という様子で伊神は頭を下げる。

「私もね、彼ならばということで推薦させてもらったんですよ」

 これまでのお見合い相手とは少し毛色が違う。
 
 ――お前がわがままを言うから、希望に近い男を連れてきてもらったんだぞ。

 こちらを見る父の顔にはそう書いてある。
 たしかに、結愛のことがなければ、裕福でもあり、優秀な大学に進み弁護士となり、若くして大物政治家に指名されている実力は、間違いなく素晴らしいものだ。

 ――その人柄さえ、知らなければ。

 こちらに向けられている、自分の見せ方を分かっているかのような柔らかな微笑み。
 だが、玲は知っている。
 その裏にあるのが、冷酷な弁護士の顔だと。
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