「好き」の2文字が言えなくて
「おはよう」
「おはよう、麻莉亜。頭、大丈夫?」
「頭?」
「二日酔いになってないか心配してるんでしょう」
「頭……あたた。なんか少し痛いかも」
「でしょうね。とりあえず、下に行って顔洗って、何か食べましょう」
「う、うん」
珠里ちゃんに続いてリビングに行ったら、そこに和真くんと悠貴くんまでいたので呼吸が止まるほど驚いた。
「麻莉亜はもう少しお酒の量を考えて飲みなさい。一緒だったのが珠里さんだから和真と俺が迎えに行けたけど、会社の飲み会だとそうはいかないぞ」
いきなり悠貴くんからお小言をくらうことになった。
「会社の飲み会だったら悠貴くんがいるんだし大丈夫でしょう」
「俺がいつも一緒とは限らないだろう」
「そ、そう?」
「心配してるんだよ。麻莉亜はかわいいから、狙ってる男にしたら酔った麻莉亜はたまらないだろうし」
「ふぇ?」
ちょっと怒ってる風だけど、かわいいとか言われて心配されるなんて幸せって思ってしまい、思わず変な返事をしてしまった。
だって、私の見た目はいたって普通だと思っているから。
「こら、わかってる?」
「わ、わかってます。会社の飲み会の時は飲みすぎないように気をつけます」
「本当に気をつけろよ」
やだやだ、これって私のこと特別だと思ってくれてるのかな、なんて期待してしまうじゃない。
昨夜、何があったか覚えてないけど、何かあったみたい?
悠貴くんの視線が熱いよ。
それに今までと違って接し方まで甘い感じがするのは気のせいかな、なんて思った。
だから、つい聞いてしまった。
「ねぇ……私って悠貴くんにとって特別って思っていいのかな?」
「うん?」
「どうなの?」
「どう思う?」
「もう! 真面目に答えて」
「あぁ、ずっと特別だ」
「本当? 嘘じゃない?」
「こんなの嘘ついてどうするんだよ」
私の頭に大きな手が乗ってポンポンと撫でられ、昨日のことは私が心配しているようなことはなかったんだと喜んでいた。