「好き」の2文字が言えなくて
変わるんだ

 さすがにいろいろとありすぎて限界を感じた私は珠里ちゃんにこれまでのことを聞いてもらった。

「前にも言ったけど、あいつはそんな女の誘いになんか乗らないし、プロポーズをするなんてあり得ないって」
「でも、工藤さん本人から言われたんだよ」
「悠貴本人には確認してないんでしょ」
「できないよ。本当だったらショックで寝込んじゃいそうだもん」

 珠里ちゃんの部屋にあるクッションを抱きしめて、顔を埋める。

「聞いてるとさ、麻莉亜がいうその女って、あいつの嫌いなタイプだと思うんだよね」
「でも、常務のお嬢さんなんだよ」
「だから、それもあいつらしくないって思うんだけど」

 珠里ちゃんに言われることが納得できない私は、ため息と一緒に願望がこぼれ出た。

「はぁ……ダメなのはわかってるけど、最後にデートくらいしたかったな」
「デートしてって頼めばいいじゃない」
「断られるのわかってて言えないよ。それに麻莉亜として会うんじゃ、妹として会うだけじゃない。それじゃデートにはならないよ」
「どんなデートしたいのか知らないけど、2人で会って話くらいすればいいじゃない」

「婚約した人が別の女性と2人でなんて無理だよ」
「その婚約が私には信じられないのよね。仮に本当だとしても、もともと知り合いなんだし会ってもおかしくないでしょう。せっかくだから最後に今の関係を変えられるかもしれないことしてみたら?」

 私が悠貴くんに対して今の関係を変えるための作戦が珠里ちゃんから提案された。
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