「好き」の2文字が言えなくて

「私も自分じゃ悠貴くんの隣に並ぶには相応しくないとかいろいろ考えて言えなかったの。でも、余計なことって何?」
「それは前に麻莉亜が早く一人前になりたい、って言っていたのを覚えてたから、今のプロジェクトが終わるまで、気持ちを伝えるのを我慢しようとしてたんだ」
「そんな風に考えてくれてたんだ。ありがとう」

 私のためを思ってくれていたことがわかり、心の底から喜びが湧いて笑顔が溢れた。すると悠貴くんが私の手に手を重ねてきた。

「じゃあ、麻莉亜の気持ちも聞かせてくれる?」
「うん。私も……悠貴くんのことが好き」

 好きと言った瞬間、ギュッと抱きしめられた。

「やっと聞けた。やっぱり俺たちの気持ちは同じだったんだな。よかった」

 悠貴くんの声が耳元で聞こえて、顔の熱が一気に上がる。
 背中に回された手が肩に移り、嬉しそうな顔を見せてくれた。その後、悠貴くんの顔が近づいてきて、優しいキスをしてくれた。

「ダメだ。今日はこのくらいにしておかないと麻莉亜をめちゃくちゃにしそうだ。まだ、解決してないこともあるし、シャワーを浴びたら帰ろう」
「えっ?」
「なんだよ。期待したか? でも、きちんとお付き合いを許してもらってからな」

 そう言って、もう一度さっきより少し長めのキスをしてくれた

「さあ、支度して帰ろう。2人で朝帰りだからな。麻莉亜はなんて説明する?」
「説明……。あ、私ってば無断外泊しちゃったんだ」

「あぁ。どうしよう……」と頭を抱える私に、悠貴くんは笑いながら頭に手を置き撫でてくる。

「無断じゃないよ。ちゃんと珠里さんに連絡してあるから。それより、シャワー浴びて、そのメイクを落としてこい」
「やだ、メイクしたまま寝ちゃったの!? あ、メイク……どうしよう」
「麻莉亜はメイクなんてしなくたってかわいいよ」

 額にチュッと柔らかい悠貴くんの唇が触れ「ほら」と背中を押された。

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