「好き」の2文字が言えなくて

「やっと麻莉亜を愛せるな」
「う、うん。でも……」
「でも、なに?」
「私、初めてだし、悠貴くんがこんなに近くにいると恥ずかしくて、どうしたらいいのかなわからないよ」

「やっぱり麻莉亜に何かを教えるのは、俺だけの特権だな」
「も、もう……」

 言葉を返そうとした矢先に唇を塞がれて何も言えず、その夜は悠貴くんにたっぷりと愛された。

 何もかもが初めてでカチコチになっていた私だったけど、悠貴くんによって身も心もとろとろに蕩けてしまった。
 さすが、私専属の家庭教師。


 翌朝、目が覚めると先に目覚めていた悠貴くんが私を見ていたので、昨夜のことを思い出してしまった私は恥ずかしくて顔を両手で隠した。

「おはよう」
「お、おはよう……。悠貴くん、早いね」

 私の両手を掴み、視線を合わせてきた悠貴くんがキスをしてくれた。

 大好きな人の目覚めのキスに酔いしれていると、唇を離した悠貴くんが真剣な表情で昨夜と同じセリフを口にした。

「麻莉亜、改めて言うよ。結婚するぞ」
「本当にいきなり結婚していいの? 私たち付き合いだして何日も経ってないよ」

 先週末、朝帰りをした日に付き合うことになったばかりで、私たちはデートらしいこともしていなかった。

「うん。だって俺たち今さら付き合うとか必要ないくらい、ずっと一緒にいただろ。それに俺は麻莉亜のことずっと好きだったんだよ」
「うん。私もずっと悠貴くんのことが好きだった」
「じゃあ、決まりだ。今日、これから麻莉亜のお母さんやお祖父さんたち、それと珠里さんや和真に挨拶に行こう」
「うん。その後は悠貴くんの家にもね」
「さあ忙しくなるぞ」

 急いで朝食を食べた私たちはそれぞれの家に挨拶に行った。

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