「好き」の2文字が言えなくて

「そういえば来月よね、結婚式」
「はい」
「楽しみよね。もうドレスも選んだんでしょう。麻莉亜ちゃんならどんなドレスでもかわいいでしょうね」
「それはもう。かわいくて、それでいてすごく綺麗なんですよ。楽しみにしててください」
 私より前に悠貴くんが惚気るように答えていた。

「三上部長ってば、本当に幸せそうですね」
「あぁ、幸せだよ。な、麻莉亜」
「うー、もう。私は恥ずかしいです。どこかに隠れてしまいたい……」
「ほら、堂々と俺の横にいろよ」
「う……はい」

 赤くなっているであろう顔を両手で隠して返事をした。

 仕事と結婚式の準備に追われていると、1ヶ月なんてあっという間に過ぎていった。
 今日は私たちの結婚式が行われる。

 朝から快晴でお天気まで私たちを祝ってくれているようだった。

 新婦の控室に悠貴くんが顔を出すとにっこり笑顔で近づいてくる。

「すごく綺麗だ。それにやっぱりかわいい」
「悠貴くんもすごくかっこいい。やっぱり似合ってる」

 私のウエディングドレスはオフショルダーのAライン。サテンのシンプルなものだけれど、ひと目で気に入ったものだ。

 悠貴くんはシルバーのモーニングコートにブラックのパンツでベストはチャコールグレー。これも私が絶対に似合うと言って選んだものだった。

 私の手を取り、視線を合わせてきた悠貴くん。

「麻莉亜、愛してる。もう、不安になんかさせない。これからもずっと一緒だぞ。離さないからな」
「私も愛してる。何があっても絶対に離れないからね」

 式の前に2人だけで誓いあい、悠貴くんから額にキスをされた。

「唇へのキスは本番に取っておくな。さあ、行こう」
「はい」

 うふふと笑い、私は笑顔で差し出された悠貴くんの手を取った。

 私たちの関係はこれからも続いていく。


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