「好き」の2文字が言えなくて
すれ違い


 今回私が参加するプロジェクトのマネージャーは前田さん。悠貴くんの同期で同じく優秀だと言われている人。
 噂では悠貴くんと前田さんは幹部候補とまで言われているらしい。

 そういえば、前田さんもファンクラブがあるなんて言われるほどイケメンだった。前田さんはスポーツマンタイプのイケメンで、王子様タイプの悠貴くんとは違うけど、人気があるのは頷ける。

 前田さんも確かにかっこいいかもしれないけど、私には断然、悠貴くんが1番かっこいいわ。心の中で悠貴くんを思い浮かべると、つい顔が緩んでしまう。
 でも、これから新しいプロジェクトが始まるのだから、今はニヤけている場合ではないと気を引き締めた。

 カンファレンスルームに集められたメンバーを前にマネージャーの前田さんが挨拶をし、続いてそれぞれが自己紹介をしていく。メンバーの中に前回のプロジェクトでも一緒だった久美さんもいて、私としてはとても心強かった。

「麻莉亜ちゃん、今回も一緒ね。嬉しいわ」
「私も久美さんがいてくれて嬉しいです」
「今回の前田さんは三上さんとはちょっとやり方が違うから、はじめは戸惑うかもしれないけど麻莉亜ちゃんならすぐにポイントを掴んでうまくやれると思うわ」
「まだまだ勉強することばかりですが、今回もしっかりと経験値を上げていきますので、よろしくお願いします」

「田島さん、村井さん、今回は僕も一緒ですよ」
「北沢くんも一緒だったわね」
「なんですか、そのオマケみたいな言い方」
「北沢さん、あの、よろしくお願いします」
「村井さん、やっと一緒に仕事ができるね。困ったことがあったらなんでも相談して、お互いに協力して頑張ろうな」

 北沢さんが私の手を握りブンブンと上下に振ってくる。久美さんがその間に割り込むように入ってくる。

「そう、2人には頑張ってもらわないと。ね、前田マネージャー」

 話を振られた前田マネージャーが苦笑いしながら話を締めていく。
「サポートのメンバーも含めて、チーム一丸となっていくぞ。みんな、よろしく」

 そんな会話を交わし、クライアントの情報を確認していった。本格的にプロジェクトが始まるとさらに忙しくなるので改めて気合を入れる。

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