愛を知らない僕たちは、殺す事で愛を知る

キラキラと光るイルミネーション、流れるクリスマスソング、街中はこれでもかとクリスマスムードに浮かれている。

そんな街並みを横目に俺は図書館へと急ぐ。

ランドセルには柚葉へのクリスマスプレゼントが入っている。
本当は当日に渡したいけれどクリスマスは俺は毎年家族で食事をするのが決まりになっている事から、少し早いけれど今日クリスマスプレゼントを柚葉へ渡そうと決めていた。

別にクリスマスなんて特別な日でも何でもない、柚葉と出会うまではそう思っていた。

だけど今年はクリスマスを楽しみにしている自分がいる。
別に両親と過ごすのが楽しみな訳じゃない。
むしろ当日は柚葉と過ごしたかった。

だけど、クリスマスという理由があれば柚葉にプレゼントを堂々と渡せる。

今まで柚葉は俺から何かを貰うのを嫌がっていた。
コンビニや自販機でジュースひとつ買って渡すのもだ。

『私は何も返せないし、それに例えジュースひとつでも買って貰うのは嫌なの。
一哉君とだけは対等でいたいから』

そう言っていつも俺からは何も受け取らなかった。
そんな柚葉でもクリスマスプレゼントならきっと受け取ってくれるだろう。

柚葉へのプレゼントは選ぶだけでも楽しかった。

今までクラスメイトの誕生日プレゼントやクリスマスのプレゼント交換等は毎年適当にネットでお薦めを注文してた。
そこには何の楽しみもなかった。

だけど柚葉へのプレゼントは自分からお店にいき自分で選んだ。

柚葉は何が喜ぶだろう、寒いしマフラーや手袋はどうだろうか、色は?柄は?
柚葉はシンプルな物が好きだからあまり派手じゃない物で……、なんて柚葉の事を考えながら選ぶのは今まで感じた事のない楽しさがあった。

もしかしたら柚葉は自分は何も返せないと言って受け取るのを渋るかも知れない。
困った様に眉を下げるかも知れない。

そしたら俺は言うんだ、このプレゼントを選ぶ時、凄く楽しい時間だったからそれが柚葉からのプレゼントだって。
それだけじゃない、柚葉は出会ってから今までずっと、俺にたくさんプレゼントをくれてるからって。

早く柚葉に会いたい、そしてプレゼントを渡したい。
そう思いながら少し走って来たせいかいつもより早く図書館に着いた。
裏の庭園のいつものベンチに座って柚葉を待つ。


「まだかなー、柚葉」

自然にこぼれるひとり言。
待つ時間もドキドキと楽しさと緊張に包まれる。
柚葉、喜んでくれるかな?
俺の好きなあの緩やかな笑顔を見せてくれるかな?

「……遅いな」

俺が図書館に着いてからもう1時間が過ぎようとしている。
いくら俺が早く着いたといっても少し早かったってだけだ。
それにいつもは柚葉の方が早く来ている事の方が多い。

……嫌な胸騒ぎがする。
まさか事故にでもあったんじゃ……。
スマホを持っていない柚葉とは連絡も取れない。今俺が下手に動くとすれ違いになってしまう可能性もある。

……どうしよう、探しにいこうか。

柚葉の学校は知っている。
家も一度だけいった事がある。
ついこの間夢中で話していたらいつもより遅くなってしまい辺りも暗くなっていたから柚葉を家まで送っていた。

柚葉はしきりに大丈夫だと遠慮していたけれど暗い中ひとりで帰すのは心配だったし、それに普段連絡を取れないから何かあった時のために柚葉の家を知っておきたかった。

……いってみよう、そう決意してランドセルを背負いベンチから立ち上がる。
どうか何もありませんように、
そう願いながら先程とは違い嫌な音を立てる胸を押さえ付けた。

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