愛を知らない僕たちは、殺す事で愛を知る

朝、目覚ましより早くに目が覚める。

いつもの事だ。
目覚めがいいという訳ではない。
単純に眠りが浅いんだと思う。

洗面所に向かい顔を洗いパジャマから制服に着替えてリビングへ入る。カーテンを開けるとリビングに降り注ぐ太陽の光。

そんな明るく広い、だけど自分しかいないリビングで家政婦が昨日の内に作ってくれていた食事を冷蔵庫から取り出し電子レンジで温める。

目玉焼きにウインナー、サラダにパンというありふれた朝食。

食事を済ませ歯を磨き身支度を整えランドセルを背負い家を出る。

誰もいない家の中に向かっていってきます、なんて吐き捨てて。

外は雲ひとつない晴天、5月晴れとはよく言ったものだ。
頬を撫でる生温い風に思わず舌打ちが出る。

うっすらと額に滲む汗を拭い学校までの通学路を歩く。

何も変わらない、代わり映えのないいつもの朝の風景。

この後も何も変わらない、学校で適当にクラスメイトと当たり障りのない会話を交わし授業を受ける。
放課後は週3塾にいくだけ。
それ以外はたまにクラスメイトと遊ぶ。

正直クラスの奴等との会話も遊びもめんどくさい。
だけど学校という小さな世界で浮かないためにはある程度まわりの人間と関わっていた方がいい。

なんて小学5年生の子どもの分際で俺は世の中を随分斜にかまえて見ていた。

いつもいつもこの繰り返しだ。
そんな毎日にため息を吐きながら俺はそれでも代わり映えのしない毎日を生きていく。
今までもこれからも。

そう、思っていた。
彼女、冬野柚葉に出会うまで。
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