愛を知らない僕たちは、殺す事で愛を知る
⑬
「おかえりなさーい先輩!
何か進展ありましたかー?」
戻ってそうそう、後輩でありコンビを組んでいる相棒、土屋にそう聞かれた峰島は小さくため息をつき椅子に座る。
「これといってなしだ。
桐生一哉は川西凛との出会いを覚えていなかったしあの日川西凛が何を伝えたかったのか全く分かっていない様子だった」
「うわ~、それ川西さんが聞いたらめちゃくちゃショックじゃないですか~。
生まれながらの勝ち組は庶民なんか相手にしないって事ですかね~?」
相変わらず軽い口調で話す土屋に若干苛立ちながらも峰島は乱雑に積み重なった書類の束を手に取り目を通していく。
「あ、そうだ先輩、俺も言われた通り調べましたよ冬野柚葉の事。
いや〜、彼女あんな可愛い顔して中々波乱万丈な人生歩んでますよ〜」
「……波乱万丈?」
「はい!
何と彼女、両親を早くに亡くしてる上に母親は殺されたんですよ!」
そう言いながら何枚かの書類をヒラヒラと靡かせ何故か得意気な顔で峰島の隣に座る土屋。
「母親が殺された?」
「はい!
あ、でもその母親ってのが実は……」
ペラペラと話を続ける土屋の話に顔が曇る峰島。
「……それで、母親の名前は?」
一通りの話が終わりそう口を挟んだ峰島に土屋はやはり得意気な顔で答える。
「こっちの母親ですよね?
冬野梓葉、旧姓二宮梓葉です」
土屋の言葉に峰島の顔が一瞬酷く驚きで染まった。
「二宮、梓葉……?」
その声はいつも冷静な峰島らしくなく、若干震えていたが土屋は気づく事はなく話を続ける。
「はい。
あ、写真ありますよ」
そう言って1枚の写真を峰島に差し出す。
震える指でそれを受け取り深く息を吐いた後に写真を見る峰島。
「!!!」
「いやー、綺麗ですよねー。
それにそっくりですよね、冬野柚葉に。
まぁ親子なんだから当たり前かー」
驚きからか、はたまた別の感情からか食い入る様に写真を見る峰島は何も言わない。
そんな峰島にさすがの土屋も何か気づいたのか、
不思議そうな顔で峰島の顔を見る。
「……何で、気づかなかったんだ……」
「え?」
ひとり言の様にポツリと呟いた後、
峰島は勢いよく椅子から立ち上がる。
「せ、先輩?
どうし……」
「調べるぞ!
5年前の事件!」
土屋の言葉を遮りそう叫んだ峰島の顔は、
苦しみが隠せていなかった。
同じ頃、
ひとりの少女は電気もつけず暗い部屋で一冊のノートを虚ろな目で見ていた。
「もうすぐ、
もうすぐだからね、
……ママ」
長く艷やかな黒髪が窓から入る風にサラサラと靡いている。
微かに入る灯りが少女を照らす。
陶器の様な白い肌、大きな茶色がかった瞳に真っ直ぐ通った鼻筋、
長く細い指から1枚の写真が風に飛ばされる。
「あっ……」
慌ててそれを拾いあげ大事そうに胸に抱きしめる。
同時に部屋にスマホの着信音が鳴り響く。
スマホを手に取り相手の名前を確認すると、少女は薄く笑みを浮かべ鳴り響くスマホをそのまま床へと投げる様に転がした。
「長かったよね、
でも、もうすぐだよ。
もうすぐ、
……終わるからね」
そう言った少女の瞳は、
強い憎しみを宿していた。
ただ、そんな中
微かに、
哀しみも見えていた。
何か進展ありましたかー?」
戻ってそうそう、後輩でありコンビを組んでいる相棒、土屋にそう聞かれた峰島は小さくため息をつき椅子に座る。
「これといってなしだ。
桐生一哉は川西凛との出会いを覚えていなかったしあの日川西凛が何を伝えたかったのか全く分かっていない様子だった」
「うわ~、それ川西さんが聞いたらめちゃくちゃショックじゃないですか~。
生まれながらの勝ち組は庶民なんか相手にしないって事ですかね~?」
相変わらず軽い口調で話す土屋に若干苛立ちながらも峰島は乱雑に積み重なった書類の束を手に取り目を通していく。
「あ、そうだ先輩、俺も言われた通り調べましたよ冬野柚葉の事。
いや〜、彼女あんな可愛い顔して中々波乱万丈な人生歩んでますよ〜」
「……波乱万丈?」
「はい!
何と彼女、両親を早くに亡くしてる上に母親は殺されたんですよ!」
そう言いながら何枚かの書類をヒラヒラと靡かせ何故か得意気な顔で峰島の隣に座る土屋。
「母親が殺された?」
「はい!
あ、でもその母親ってのが実は……」
ペラペラと話を続ける土屋の話に顔が曇る峰島。
「……それで、母親の名前は?」
一通りの話が終わりそう口を挟んだ峰島に土屋はやはり得意気な顔で答える。
「こっちの母親ですよね?
冬野梓葉、旧姓二宮梓葉です」
土屋の言葉に峰島の顔が一瞬酷く驚きで染まった。
「二宮、梓葉……?」
その声はいつも冷静な峰島らしくなく、若干震えていたが土屋は気づく事はなく話を続ける。
「はい。
あ、写真ありますよ」
そう言って1枚の写真を峰島に差し出す。
震える指でそれを受け取り深く息を吐いた後に写真を見る峰島。
「!!!」
「いやー、綺麗ですよねー。
それにそっくりですよね、冬野柚葉に。
まぁ親子なんだから当たり前かー」
驚きからか、はたまた別の感情からか食い入る様に写真を見る峰島は何も言わない。
そんな峰島にさすがの土屋も何か気づいたのか、
不思議そうな顔で峰島の顔を見る。
「……何で、気づかなかったんだ……」
「え?」
ひとり言の様にポツリと呟いた後、
峰島は勢いよく椅子から立ち上がる。
「せ、先輩?
どうし……」
「調べるぞ!
5年前の事件!」
土屋の言葉を遮りそう叫んだ峰島の顔は、
苦しみが隠せていなかった。
同じ頃、
ひとりの少女は電気もつけず暗い部屋で一冊のノートを虚ろな目で見ていた。
「もうすぐ、
もうすぐだからね、
……ママ」
長く艷やかな黒髪が窓から入る風にサラサラと靡いている。
微かに入る灯りが少女を照らす。
陶器の様な白い肌、大きな茶色がかった瞳に真っ直ぐ通った鼻筋、
長く細い指から1枚の写真が風に飛ばされる。
「あっ……」
慌ててそれを拾いあげ大事そうに胸に抱きしめる。
同時に部屋にスマホの着信音が鳴り響く。
スマホを手に取り相手の名前を確認すると、少女は薄く笑みを浮かべ鳴り響くスマホをそのまま床へと投げる様に転がした。
「長かったよね、
でも、もうすぐだよ。
もうすぐ、
……終わるからね」
そう言った少女の瞳は、
強い憎しみを宿していた。
ただ、そんな中
微かに、
哀しみも見えていた。