愛を知らない僕たちは、殺す事で愛を知る
③
急に目の前に飛び込んできた人を避けられるはずはなく、ぶつかる瞬間思わず強く目を閉じる。
少ししてそっと目を開けると目の前には尻もちをついて座り込む女の子がいた。
「ご、ごめん!
大丈夫!?」
目の前の光景に少しパニックになりながらも、そう口にして手を差し出していた。
「ううん、私こそごめんね。
急いでてちゃんと前見てなかったみたい」
そう言って照れくさそうに笑って僕の手を取り立ち上がる女の子。
「君は大丈夫?
私、思いっ切りぶつかっちゃったでしょ?
痛いとことかない?」
さっきまで照れくさそうに笑っていたのに、今度は心底心配そうな、不安そうな表情でそう聞いてくる女の子に少し、胸が痛くなった。
「僕は大丈夫だよ。
でも、君は尻もちまでついてるし……」
「ほんと!?
本当に大丈夫!?
どこも痛くない⁉」
「え、うん、全然大丈夫……」
「良かったー!!」
僕の言葉を遮りそう、本当に安心した様に叫んで笑う女の子。
……くるくるとよく変わる表情だな、
なんてちょっと感心した。
だって僕のまわりの女の子はこんな風に表情を変えたりしない。
いつだって静かに微笑む、
それが由緒正しい家柄の淑女だ、とでも言いたげにいつも同じ顔を貼り付けているから。
「じゃあ、一緒にいこ!」
「え……?」
女の子の表情を見ながらボーッとそんな事を考えていた僕の耳に急に聞こえてきた予想もしていなかった言葉に僕は驚いて聞き返すけれど、
女の子はそのまま笑顔で僕の手を引き歩いていく。
「私はねー、今日は学校の七不思議のシリーズ読みたいんだー!
君は?」
にこにこと笑いながらそう聞いてくる女の子に、
別に読みたい本がある訳じゃない、
ここもたまたまいつもの道が通行止めで迂回してきただけ、
図書館にきた訳じゃない、
なんて言える訳もなく、
ただ、引かれるままに一緒に図書館へと入ってしまった。
……ああ、家庭教師が来るのに、
また母さんの機嫌が悪くなる、
家中の空気がピリピリと重苦しくなる、
そんな事、分かっているのに、
早く帰らなきゃいけないのに、
彼女の笑顔と暖かい手の平のぬくもりに、
僕は何も言えずに彼女の手に引かれる事を選んでいた。
少ししてそっと目を開けると目の前には尻もちをついて座り込む女の子がいた。
「ご、ごめん!
大丈夫!?」
目の前の光景に少しパニックになりながらも、そう口にして手を差し出していた。
「ううん、私こそごめんね。
急いでてちゃんと前見てなかったみたい」
そう言って照れくさそうに笑って僕の手を取り立ち上がる女の子。
「君は大丈夫?
私、思いっ切りぶつかっちゃったでしょ?
痛いとことかない?」
さっきまで照れくさそうに笑っていたのに、今度は心底心配そうな、不安そうな表情でそう聞いてくる女の子に少し、胸が痛くなった。
「僕は大丈夫だよ。
でも、君は尻もちまでついてるし……」
「ほんと!?
本当に大丈夫!?
どこも痛くない⁉」
「え、うん、全然大丈夫……」
「良かったー!!」
僕の言葉を遮りそう、本当に安心した様に叫んで笑う女の子。
……くるくるとよく変わる表情だな、
なんてちょっと感心した。
だって僕のまわりの女の子はこんな風に表情を変えたりしない。
いつだって静かに微笑む、
それが由緒正しい家柄の淑女だ、とでも言いたげにいつも同じ顔を貼り付けているから。
「じゃあ、一緒にいこ!」
「え……?」
女の子の表情を見ながらボーッとそんな事を考えていた僕の耳に急に聞こえてきた予想もしていなかった言葉に僕は驚いて聞き返すけれど、
女の子はそのまま笑顔で僕の手を引き歩いていく。
「私はねー、今日は学校の七不思議のシリーズ読みたいんだー!
君は?」
にこにこと笑いながらそう聞いてくる女の子に、
別に読みたい本がある訳じゃない、
ここもたまたまいつもの道が通行止めで迂回してきただけ、
図書館にきた訳じゃない、
なんて言える訳もなく、
ただ、引かれるままに一緒に図書館へと入ってしまった。
……ああ、家庭教師が来るのに、
また母さんの機嫌が悪くなる、
家中の空気がピリピリと重苦しくなる、
そんな事、分かっているのに、
早く帰らなきゃいけないのに、
彼女の笑顔と暖かい手の平のぬくもりに、
僕は何も言えずに彼女の手に引かれる事を選んでいた。