愛を知らない僕たちは、殺す事で愛を知る
第4章 冬野柚葉の愛と嘘①
ずっと憎しみだけを抱えて生きてきた。
私が生きるのは復讐のためだけ。
ママが遺してくれた1冊のノート。
そのノートは私とママしか知らない場所に隠してあった。
そこに書かれていたママの苦しみ、悲しみ、悔しさ、
桐生一仁の存在、
桐生一仁への想い、
そして、
私の幸せをただただ願うママの言葉。
ママを捨ててあんな女を選んだパパも、
ママからパパを奪ったあの女も、
ママを家のために捨てた癖にママの事掴んで離さないで、
ママの最期を一緒に過ごして、
ママを見殺しにした桐生一仁も、
憎くて憎くてたまらない。
最初はパパだった。
経営難から禄に点検もしていない工場に細工を施すのは小学生の私でも簡単だった。
あれが私の最初の殺人。
悩んだ、殺す事。
だって、パパは私には優しかったから。
だけど、パパは笑った。
ママが亡くなって半年が過ぎた頃、
パパはあの女と一緒に笑ってた。
これで一緒になれる、
工場も家も自分の物だ、
あいつが死んでくれて本当に良かった、
そう言って笑ってた。
ママをあんなに苦しめて、追い出して、
病院に閉じ込めて、
ひとりっきりで死ぬ事を選ぶしかなかったママを
あいつ等は笑ったんだ。
その時きっと、私の中に悪魔が棲みついた。
許さない、
許さない、
許さない、
この時、
私はママを苦しめた奴等、みんな殺してやると決めた。
それでもパパが死んだ時、
物凄く怖かった。
自分で殺したのに、
本当に死んだら怖くて怖くてたまらなかった。
身体中から血の気が引く思い。
自分の身体じゃないみたいだった。
涙が流れて止まらなかった。
身体は震えて心臓は冷たくて気持ち悪くて吐きそうで。
もう戻れないと思った。
私はもう、普通の子どもじゃないと分かった。
その後、あの女との2人だけの暮らしが始まった。
あの女は薄々気づいていた。
私がパパを殺した事を。
私を悪魔と呼んだ。
悪魔と言いながら私に暴力を振るった。
殴られ罵られ毎日の様に痣が増えていった。
禄に働きもせず逃げるように酒に溺れていった女はどんどん醜く老け込んでいった。
いつどうやってこの女を殺そうか、
そんな事ばかり考えた。
それと同時に桐生一仁についても調べた。
桐生コンツェルンの3代目ともなればある程度の情報は手に入る。
そして知った、
桐生一仁には私と同じ年の息子がいる事を。
さすがに息子の詳しい情報は調べても出てこない。
だけど桐生コンツェルンの跡取り息子となればそれなりの学校に通ってるだろう事は想像がつく。
お金持ちの子どもが通う附属学校にいってみたらすぐに桐生一仁の息子は見つかった。
まわりの同級生に桐生と呼ばれる同じ年位の男の子が校門から出て来た。
ひと目で分かった、
桐生一仁にそっくりだったから。
見つからないように様子を伺う。
その男の子は綺麗で高そうな服を着て、友達に囲まれ笑っていた。
そのまま距離を取りながら男の子の後を歩く。
辿り着いたのは広い庭に大きなお屋敷の家。
慣れた手付きで門を開け中へと入っていく男の子。
しばらくその場から動けなかった。
ブランド物だろう綺麗な洋服に身を包み、同じ様な友達に囲まれて笑いながら楽しそうに毎日を送っているのだろう、
こんなにも大きなお屋敷で両親も揃っていて、何不自由なく暮らしているんだ。
それに対して禄に服も買えない私はいつも同じよれよれの服、友達なんていやしない、
古く狭いアパートであの女と2人、毎日暴力を受けて、復讐だけを考えて暮らしている私。
……ああ、何て惨めなんだろう。
何て不公平なんだろう。
あの子が太陽なら
私は影だ。
あの子が清らかな水なら
私は泥水だ。
ねえ、君はお腹が空いて眠れない事ある?
貧乏人だって笑われ蔑まれた事ある?
毎日暴力を受けて痣をつくる事ある?
毎日毎日、悪魔だって言われて殴られる事ある?
人を、殺した事ある?
私は、毎日毎日憎しみだけを抱えて生きているのに。
何で君はそんなに幸せそうなの?
私にはもう誰もいないのに。
ママは死んだ、
パパは殺した、
私は悪魔だ。
もう私は光の下を歩けない。
一生暗闇を這いつくばりながら生きていくんだろう。
なのに、
何であの子は笑ってるの?
何であの子は幸せそうなの?
……ずるい、
ずるいよ。
あの子の父親はママを見殺しにして、
なのに何でもない様に今ものうのうと何の不自由もなく何も失わずに家族に囲まれて生きている。
それはきっと一生続くんだ。
あの子もずっとずっと、何も失わずに幸せだけを受けて一生光の下で生きていくんだ。
そんなの、
ずるい。
私はパパを殺したのに。
私はもう戻れないのに。
私は悪魔になったのに。
君だけ天使でなんていさせない。
だって、君は私と同じじゃなきゃいけない。
だって君の父親は私のママの最期を奪って見殺しにしたんだから。
だから、
君も一緒に堕ちて。
私が生きるのは復讐のためだけ。
ママが遺してくれた1冊のノート。
そのノートは私とママしか知らない場所に隠してあった。
そこに書かれていたママの苦しみ、悲しみ、悔しさ、
桐生一仁の存在、
桐生一仁への想い、
そして、
私の幸せをただただ願うママの言葉。
ママを捨ててあんな女を選んだパパも、
ママからパパを奪ったあの女も、
ママを家のために捨てた癖にママの事掴んで離さないで、
ママの最期を一緒に過ごして、
ママを見殺しにした桐生一仁も、
憎くて憎くてたまらない。
最初はパパだった。
経営難から禄に点検もしていない工場に細工を施すのは小学生の私でも簡単だった。
あれが私の最初の殺人。
悩んだ、殺す事。
だって、パパは私には優しかったから。
だけど、パパは笑った。
ママが亡くなって半年が過ぎた頃、
パパはあの女と一緒に笑ってた。
これで一緒になれる、
工場も家も自分の物だ、
あいつが死んでくれて本当に良かった、
そう言って笑ってた。
ママをあんなに苦しめて、追い出して、
病院に閉じ込めて、
ひとりっきりで死ぬ事を選ぶしかなかったママを
あいつ等は笑ったんだ。
その時きっと、私の中に悪魔が棲みついた。
許さない、
許さない、
許さない、
この時、
私はママを苦しめた奴等、みんな殺してやると決めた。
それでもパパが死んだ時、
物凄く怖かった。
自分で殺したのに、
本当に死んだら怖くて怖くてたまらなかった。
身体中から血の気が引く思い。
自分の身体じゃないみたいだった。
涙が流れて止まらなかった。
身体は震えて心臓は冷たくて気持ち悪くて吐きそうで。
もう戻れないと思った。
私はもう、普通の子どもじゃないと分かった。
その後、あの女との2人だけの暮らしが始まった。
あの女は薄々気づいていた。
私がパパを殺した事を。
私を悪魔と呼んだ。
悪魔と言いながら私に暴力を振るった。
殴られ罵られ毎日の様に痣が増えていった。
禄に働きもせず逃げるように酒に溺れていった女はどんどん醜く老け込んでいった。
いつどうやってこの女を殺そうか、
そんな事ばかり考えた。
それと同時に桐生一仁についても調べた。
桐生コンツェルンの3代目ともなればある程度の情報は手に入る。
そして知った、
桐生一仁には私と同じ年の息子がいる事を。
さすがに息子の詳しい情報は調べても出てこない。
だけど桐生コンツェルンの跡取り息子となればそれなりの学校に通ってるだろう事は想像がつく。
お金持ちの子どもが通う附属学校にいってみたらすぐに桐生一仁の息子は見つかった。
まわりの同級生に桐生と呼ばれる同じ年位の男の子が校門から出て来た。
ひと目で分かった、
桐生一仁にそっくりだったから。
見つからないように様子を伺う。
その男の子は綺麗で高そうな服を着て、友達に囲まれ笑っていた。
そのまま距離を取りながら男の子の後を歩く。
辿り着いたのは広い庭に大きなお屋敷の家。
慣れた手付きで門を開け中へと入っていく男の子。
しばらくその場から動けなかった。
ブランド物だろう綺麗な洋服に身を包み、同じ様な友達に囲まれて笑いながら楽しそうに毎日を送っているのだろう、
こんなにも大きなお屋敷で両親も揃っていて、何不自由なく暮らしているんだ。
それに対して禄に服も買えない私はいつも同じよれよれの服、友達なんていやしない、
古く狭いアパートであの女と2人、毎日暴力を受けて、復讐だけを考えて暮らしている私。
……ああ、何て惨めなんだろう。
何て不公平なんだろう。
あの子が太陽なら
私は影だ。
あの子が清らかな水なら
私は泥水だ。
ねえ、君はお腹が空いて眠れない事ある?
貧乏人だって笑われ蔑まれた事ある?
毎日暴力を受けて痣をつくる事ある?
毎日毎日、悪魔だって言われて殴られる事ある?
人を、殺した事ある?
私は、毎日毎日憎しみだけを抱えて生きているのに。
何で君はそんなに幸せそうなの?
私にはもう誰もいないのに。
ママは死んだ、
パパは殺した、
私は悪魔だ。
もう私は光の下を歩けない。
一生暗闇を這いつくばりながら生きていくんだろう。
なのに、
何であの子は笑ってるの?
何であの子は幸せそうなの?
……ずるい、
ずるいよ。
あの子の父親はママを見殺しにして、
なのに何でもない様に今ものうのうと何の不自由もなく何も失わずに家族に囲まれて生きている。
それはきっと一生続くんだ。
あの子もずっとずっと、何も失わずに幸せだけを受けて一生光の下で生きていくんだ。
そんなの、
ずるい。
私はパパを殺したのに。
私はもう戻れないのに。
私は悪魔になったのに。
君だけ天使でなんていさせない。
だって、君は私と同じじゃなきゃいけない。
だって君の父親は私のママの最期を奪って見殺しにしたんだから。
だから、
君も一緒に堕ちて。