極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~

2.ビジネスと言われれば一応ビジネス

「お姉さんの名前は?」
「木浦朱里」
「おっけー、朱里ね」

“いきなり呼び捨て……!”

 おずおずと差し出されていた彼の手を取るとブンブンと軽く振られすぐ離される。
 そして向かい合わせで座った彼はポケットからスマホを取り出し私の方へと向けた。

「連絡先交換しよ、何メインで使ってる?」

 にこりと笑った顔がやたらいい。
 思わず一瞬見惚れた私だったが、すぐにハッとして自分もスマホを取り出した。

“電話、それともメール……”

 瞬時に思考を巡らせた私は『inforsy(インフォジー)connect』、略して『インコネ』というコミュニケーションアプリを起動し見せる。

「インコネでもいい?」

 形式ばらない、カジュアルなという意味のinformalと、簡単なという意味のeasyを掛け合わせた造語のinforsyと、繋がるという意味のconnectから名付けられているこのアプリは、友達登録している相手と簡単に画像や音楽が共有出来たり、メッセージに通話までも可能な反面、対面でしか友達登録が出来ないという不自由さが特別感を演出し学生を中心に一気に流行っていた。
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