極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~
 いかにもラブホ、というような部屋もあれば何故か目に痛いようなカラフルな部屋も選べたが、その中から最もシンプルな部屋を光希が選び、そしてまた彼に手を引かれる形で促されるままエレベーターに乗り込む。

「あのさ」
「!」
 
 エレベーターのボタンを操作した光希は、視線を合わせないようにか点灯する階表示へと視線を固定しながら呟くように口を開く。

“そ、そうだ、私また相手に任せるばっかりで……!”

 亮介にそんなところがつまらないと言われたばかりなのに、また同じことをしていることに気付くが、だがここからどうしたらいいかわからない。
 経験豊富で、魅力ある女性はこういう時にどうするのか教科書があれば欲しいくらいである。

「朱里」

 エレベーターの動きがいつもより遅く思えて変な緊張が私を包む。

“今つまんないって思ってるのかも”
 あの男の言ってた通りだった、なんてもし思われていたら?

「あーかーり?」

 また嗤われるかもしれないと思うと、つつ、と背中に嫌な汗が伝った、その時だった。
 
「朱里ってば!」
「へっ!?」

 突然パッと私の顔を覗き込むように光希が正面に立つ。
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