極上の男を買いました～初対面から育む溺愛の味～

7.欲しいものは

　私と光希の間に流れる温度感に気付いたのだろう。
　亮介が顔を歪ませ私を睨む。だがそんな視線を遮るように光希が亮介へと一歩近付いた。
　
　ぱっと見10センチ近く光希の方が身長が高い。自分より背の高い相手に見下ろされているからか、亮介が居心地悪そうに体を動かすが、亮介の腕を光希が掴んだままの為それも叶わないようだった。

「隅に女性を追いつめて暴力行為だなんてあり得ないよね」
「俺は……っ！」

　優しい声色で紡がれるその音程が一定で、逆に圧を感じる。
　そんな光希に気圧された亮介は一瞬もごついたものの、突然鼻で笑った。

「あー、なるほど。お前も俺と同じ口だろ」
「は？」
「でも残念だったな、そいつ社長令嬢だなんて言いながら実際は小さな町工場の娘だから」

　私の眼前には光希の背中が広がっているため亮介の表情はわからないが、あのカフェで見たようなニヤニヤ笑いを浮かべているのだろうとそう確信する。

“本当、なんで私こんな男と一瞬でも結婚を考えてたんだろ”

　後悔と同じくらい惨めな気持ちになった私が思わず俯いた時、思い切り光希が吹き出した。