極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~
 また、亮介は責任を取って部署移動が決まった。
 移動先の部署は部品庫の管理をしている部署で、もちろんその仕事も重要であることは間違いないが華々しい活躍をするというよりは何年も同じことを繰り返し地道に積み重ねるポジションである。
 きっとあの亮介には耐えられないだろう。

“それがわかっているからあの部署に異動させたっていう噂もあるくらいだし”

 どうやらいまだに私の悪口を言っているようだが、それが逆に僻みだと取られそれなりにあった亮介の人気はもう見る影もない。
 ブツブツと爪を噛みながら文句ばかり言っている彼が当然新しい部署で馴染めるはずもなく、女の子たちに連絡しても全て無視されている――というのは、私が偶然女子トイレで聞いてしまったことだった。

“やめやめ! あんなやつもう関係ないし”

 折角光希が誘ってくれた二人きりの祝いの席にこんなことを思い出していてはもったいないと、まだ半分以上グラスに入っていたロゼを一気に飲み干す。

「ちょ、朱里!?」
「ふふ、美味しい!」
「もう、まだ酔わないでよ?」
「これくらい平気よ。料理も楽しみだなぁ」
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