極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~
 欲張りセットにしたよ、と彼が笑っていたのできっと魚もお肉も楽しめるコースなのだろう。
 どちらともよく合う可愛いロゼが最初に出て来たのもきっとその証拠だと思いつつ空になったグラスを置くと、すかさずお代わりが注がれた。

「今日は大事な話があるんだよね」

 いつもより真剣な声色にドキリとし、グラスに伸ばしていた手を慌ててひっこめる。
 さっき一気飲みをしたからだろうか。ドキドキと鼓動が激しく、体が熱い。

「朱里に言わなきゃいけないことがあるんだ」
「な、何……?」

 ごくりと思わず喉を鳴らし、緊張かれ背筋を伸ばす。
 しかしそんな私に告げられてのは、「報酬の件なんだけど」というある意味正しい言葉だった。

 
「報酬、ね。えっと、いくら払ったらいいかしら」

 その言葉にがっかりしてしまうのは、私が別の言葉を期待したからだろう。

“お金で買うって言ったのは私なのにね”
 
 内心がっかりしたことに気付かないフリをしなるべく冷静にそう質問すると、射貫くように私を見ている光希と目が合い心臓が跳ねる。
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