極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~
「なによ、なによなによ! だったら誰かと経験積んでやるわよっ」

 決して口に出したつもりはなかったのだが、怒りに支配されていたせいかどうやら盛大にそう口走っていたらしく、突然後ろの席から吹き出された。

「え」
「あー、ごめん。笑うつもりはなかったんだけど」

 笑うつもりはない、なんて口にしながらクスクスと堪えられない笑いを漏らしつつ、後ろの席の男性が振り返るように顔をこちらへと向ける。

 清潔感のある黒髪は短めの前髪をワックスで真ん中に分け、端正な顔立ちが笑うと少し幼く私よりひとつかふたつ下に見えた。


「いやぁ、お姉さんちょっと見る目無さすぎない?」
「うっ」

 痛いところを突かれ、がっつり聞かれていたことも確定した羞恥で一気に顔が熱くなる。
 恋人――だった男とのあんな話、しかも夜の生活までも暴露されたことを改めて思い出した私は思わず彼の視線から逃げたくて思い切り俯いた。

「聞くつもりはなかったんだけど聞こえちゃって。で、聞いちゃったからには少しお節介」
「……?」
「『誰かと』は止めといた方がいいよ、また変な男を捕まえそう。だから……」
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