極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~
「……ぶふっ」
「…………。」

 吹き出したような笑いを辿り、じとりと光希へ視線を送ると彼の肩が小さく震えていることに気付く。

「ふっ、くくっ、――んんッ、朱里は今、早く二人きりになりたいなって思ってる」
「全然思ってない」
「あはははっ」

 バッサリそう返事をすると、とうとう我慢が出来なくなったのか光希が思い切り笑い出し、私の目は更に半眼になった。

「あー、ははっ、ごめん。まさか一瞬でも信じるとか思わなくて」
「なっ、そ、それはだって!」
「一応言っとくと、朱里が顔に出過ぎてるってだけだよ」

 くっくっ、とまだ笑いながらされるネタバラシに呆れつつ、だがそれは同時にそれだけ私のことを気にして見てくれているということでもあった。

“そんなネタバラシされたら怒れないじゃない”

 明らかにからかわれたのだが、悪い気にもならずむしろ少しだけ喜んでいる自分に内心苦笑してしまう。

「でもなんで突然そんなこと言い出したの?」

 流石にもう仕事をする気にならず、データを保存してから電源を落としているとふいに光希が拗ねたような表情でふいっと顔を逸らした。
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