極上の男を買いました~初対面から育む溺愛の味~
「この時間はいると思ったんだけどなぁ」

 あまり長時間お邪魔するのは、と研究室を後にした私たち。 

だが、光希にはまだお目当ての人がいたようで少し名残惜しそうにキョロキョロとした、そんな時だった。

「不二くん?」
「教授!」

 後ろから声をかけてきた年配の男性に、光希がパッと表情を明るくした。

“もしかしてこの方が光希の探していた人なのかしら”

「こんにちは!」
「あぁ。はは、そんなに深く頭を下げる必要はありませんよ」

 私が慌てて頭を下げると、少しおっとりした優しい声でそう告げられる。
 その言葉に従いそっと顔を上げると、声の通りの優しそうな笑顔が向けられていて私の緊張が少し緩んだ。

「ご無沙汰しています」
「元気そうで何よりだ、それに、いい出会いをしたのかな」
「はい、俺の運命の人ですよ」
「それはそれは」

 さらりと告げられた言葉に驚いた私とは対照に、どこか嬉しそうに頷いた教授が再び私へと視線を移す。

「またいつでもふたりで遊びに来なさいね」
「あ、ありがとうございます」

 残念ながら今日はあまり時間がないのだとそのまま去る教授を見送った私たち。

「優しそうな教授ね」
「いや、ただの鬼だよ」
「ただの鬼!?」
 
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