キス魔な副社長は、今日も秘書の唇を貪る。~キスで力を発揮するハイスペ副社長に掴まりました~

 コンコンッ


その音を聞き、私と副社長は急いで離れる。
そして副社長は扉に向かって声を上げた。


「どうぞ」
「はい、失礼致します」


ゆっくりと扉が開く。
中に入ってきたのは、この前書類を持って来ていた総務部の緋山さんだった。


「総務部の緋山です。藤堂秘書、お疲れ様です」
「お疲れ様です」


緋山さんは私だけを呼び、挨拶をした。
そこに少しの違和感を覚えたが、副社長に用事があるのかと思い、書類に目を落とす。


しかし、どうやら違ったようだ。



「藤堂秘書、こちらに副社長の決裁印をお願い致します」
「……緋山さん。副社長、そちらにいらっしゃいます。直にどうぞ」
「いえ、僕は藤堂秘書にお願いしたいのです」
「……」


思わず目線を副社長の方に向ける。
彼は少しだけ眉間に皺を寄せて、口を閉ざしていた。


「…一応、お受け致します。ですが、副社長がいらっしゃるときは直々にお話をされて下さい」
「分かりました。では、次は副社長がご不在の時に参ります」
「……そういうことではなくて…」
「失礼致しました」


無理矢理言葉を遮るようにして、副社長室を出て行った緋山さん。

まるで、副社長の姿が見えていなかったかのような態度だった…。



「…彼のプロフィールは?」
「あ、今…調べます」


職員録を引っ張り出し、総務部のページを開く。


「緋山(つばさ)、29歳。総務部所属の大卒…独身。…入社3年目の中途です」
「…そう」


先程と変わらない表情の副社長。

少し何かを考えたのち、私の方に歩いてきて抱き締める。


「彼、いい度胸してるね」
「…そうですね」


私が小さく頷くと、副社長に顔をそっと掴まれ貪るようなキスをされる。


キスをしながらもまだ何か考えている様子だった副社長は、満足するまでひらすらキスをし続けた。




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