推しの育て方を間違えたようです~推し活に勤しんでいたら、年下王子の執着に気づけなかった~
地元の郵便局に出しても手紙は届くのだが、早く届くのであればそれに超したことはない。
「お嬢様ったら、殿下とは帰ったら毎日会えますよ?」
「いいのよ。旅先で書くというところが大切なの」
手紙一枚で逃げるようにここまで来てしまった。手紙を送るくらいしか、この後ろめたさを払拭する方法が思いつかなかったのだ。
結局手紙には謝罪の一文も入れられなかったのだが。
アンジーは苦笑を浮かべつつも、荷物の中に手紙を入れてくれた。届くのは早くて七日後。ミレイナが帰り支度を始めたころくらいだろう。
「そうだ。明日、パーティーに参加することになってしまったのだけれど、よそ行き用のドレスはあったかしら?」
ミレイナは着飾ることには興味がない上、服装に拘りはない。しかし、あまりにも適当なドレスはエモンスキー家の迷惑になることも知っていた。
流行りである必要はないが、上等の物を身につける必要がある。幼いころから耳にたこができるのではないかと言うほど聞かされてきたことだ。
ミレイナの服飾関係はすべてアンジーに一任しているため、心配はない。しかし、今回は「ゆっくりする」という予定しか伝えていなかった。
「もちろん、どんな状況にも対応できるように用意してありますから、ご安心ください」
「さすがだわ。わたくし一人だったら、ドレスがなくて困っていたところよ」
「お嬢様をサポートするのが私の役目ですから。明日はご安心ください」
アンジーは得意げな顔で笑った。
◇◆◇
パーティー会場はエデンの丘がある公園にある古城で行われるようだ。
かつては王族の持ち物だったという古城は、いまではフリック家が引き継ぎ、手入れをしているらしい。こうして、ときどきパーティー会場として使うのだそうだ。