【書籍化決定】推しの育て方を間違えたようです~第三王子に溺愛されるのはモブ令嬢!?~

 みんな同じ世代の男女ばかりだ。出会いを求めた男女が多く集まる場というのは、王都でもよくある。田舎でも同じようなものなのだろうか。

「ビルからお姉様は婚活中だと聞きました。よかったら素敵な人を探してください」

 サシャはミレイナの耳元で囁く。その言葉に目を丸めたが、サシャは他の参加者の元へと駆けて行ってしまった。

 よくよく見てみれば、見たことのある顔ばかりだ。

 目が合っては逸らされる。女性たちは見たことのない顔ぶれなので、この辺りで暮らす令嬢たちなのだろう。彼女たちは数名で固まって、遠巻きに参加者の男性を見ていた。

 人の顔を覚えるのが得意ではないミレイナにだってわかる。男たちはふだん王都の夜会で見かける人ばかりではないか。

「ミレイナ嬢、お久しぶりです」

 声をかけられて振り返ると、そこには見たことのある金の髪があった。――アンドリュー・フレソンである。

 ミレイナは目を見開いた。

「フレソンさん。ごきげんよう。まさかこのようなところでお会いするとは思いませんでした」
「驚いても無理はないでしょう。ちょうど近くに来ていたものですから」

 彼は人のよさそうな笑みを浮かべた。

(外に女が三人、婚外子は二人……。人は見かけによらないものね)

 以前、セドリックからもらった情報を反芻する。

 ふだんのミレイナなら、アンドリューの言葉をそのまま鵜呑みにしだろう。しかし、この状況はで「そうなのね」と納得するほどミレイナも馬鹿ではなかった。

(名前は覚えていないけど、ほとんど王都で見たことがある男性ばかり。……わたくしと結婚してエモンスキーと繋がりたい人かしら? もしかしたら、セドリックと仲良くなりたいのかも)

 両親は社交的な性格なので、夜会に足繁く通えば仲良くなる機会は得られるはず。けれど、セドリックは別だ。彼は仲良くなろうとして簡単に仲良くなれる相手ではない。
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