【書籍化決定】推しの育て方を間違えたようです~第三王子に溺愛されるのはモブ令嬢!?~

 悩んでいると、ミレイナ周りに数名の男性が集まってきた。シャンパンを片手に「ご一緒してもよろしいですか?」と問われれば、「いや」と断ることもできない。

 パートナーとして来ていた護衛騎士が、男たちを威嚇するように睨んだ。

(歓迎会だなんて嘘ね)

 ミレイナは小さくため息を吐く。

 視線だけでビルを探してみれば、彼は遠くからミレイナの様子を見ていた。
 最初からミレイナの婚活のためのパーティーを企画していたのだろう。

 ビルはミレイナと目が合うと、視線を逸らした。

「……さすがに失礼だわ」

 ミレイナは小さく呟く。側にいた男たちにも聞こえないくらいの小さな声だ。
 二人が頑張って準備したというから、来たのに。これでは疲れ損ではないか。

「ミレイナ嬢? いかがされましたか?」

 男たちがミレイナの顔を覗き込む。
 ミレイナは息をゆっくりと吐き出すと、満面の笑みを浮かべた。

「そろそろ帰ろうかと思いまして」
「え!? まだ来たばかりではありませんか」

 一人の男が大きな声で言った。それに続いて他の男も同意する。

「せっかくのパーティーなのですから、もう少しお話をしませんか」
「お疲れでしたら、椅子を用意させましょう」
「私たちはミレイナ嬢のことをもっとよく知りたいのです」

 親を求めるひな鳥のように、男たちは口々に引き留めるための言葉を口にする。ミレイナはその男たちの顔を一人ずつ見て、肩を竦めた。

「わたくし、今日はいつもとは違うパーティーを期待して――……」
「ええ、そうでしょうとも。この歴史が刻まれた城と美しい景色。王都とはまったく違いますね」
「ミレイナ嬢、よろしければ美しい景色を見に参りましょう」
「それでしたら私と――……」

 ミレイナの言葉を聞き終える前に、男たちは新しい言葉を口にし手を差し伸べた。
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