【書籍化決定】推しの育て方を間違えたようです~第三王子に溺愛されるのはモブ令嬢!?~
ビルはいまだに言い訳を並べていたが、ミレイナの耳には届かなかった。
(ビルのことを弟以上に見たことはないけれど、サシャさんからしてみたら不安よね。わたくしが考えなしだったわ)
ここ数年、ビルとの関わりが多かったわけではない。
元々引きこもり気質のミレイナは、夜会の参加も控えめだったし、ふだんビルを連れ回すようなこともしたことがなかった。
けれど、遠くに住んでいれば、認識はねじ曲がってしまっていてもおかしくはないだろう。
これを機に、ビルとはほとんど関わりがなくなっていることを伝えなければならない。
「サシャさん。今日は素敵なパーティーをありがとう。少し話があるのだけれど」
「ミレイナお姉様、ビルもどうしたの?」
「わたくし、サシャさんに謝らないといけないと思って。あなたの気持ちをもっと考えなければならなかったのに、ごめんなさい」
「えっと……。その……」
サシャは困ったようにビルを見た。けれど、彼は落ち込んでいるのか、黙ったままだ。
「ビルとは年の近い従弟だから、昔はよく遊んでいたの。でも、最近は年に数回しか会っていないから安心して」
「……本当ですか?」
「もちろんよ。わたくしは引きこ……あまり外出もしないから、ビルと会う機会もないわ」
「でも、ミレイナお姉さまはお身体が弱いから、よくお見舞いをしないといけないって……」
「お見舞い……?」
ミレイナはサシャの言っている意味がわからなくて、首を傾げた。
今まで見舞いなど来てもらったことがあっただろうか?
「ほ! ほらっ! 姉さんは寝込むと長いだろ!? いつも見舞いに行っても会えなくてさ!」
ビルは慌てたように言いつくろう。
(本当に? でも、そんな報告は受けていなかったわ)
アンジーは誰かがミレイナを訪ねて来たら、報告するはずだ。ビルのときだけ報告のし忘れをするとは思えない。
「ビルは婚約してからずっと、ミレイナお姉さまのことばかり。こっちに来るって約束していた夏のバカンスだって、ミレイナお姉様に用事をお願いされたからって……」
「夏? わたくし何かお願いしていたかしら?」