【書籍化決定】推しの育て方を間違えたようです~第三王子に溺愛されるのはモブ令嬢!?~

(今になってやっとわかったわ。わたくしは殿下が……セドリックが好き)

 それに気づくのは遅すぎた。セドリックは原作でシェリーと結ばれる。それを知っているから、いつも彼は弟のようなものだと言い聞かせていたのだ。
 ミレイナは嘘をつくのが苦手だ。自分の気持ちに気づいてしまった以上、それを隠して他の人と結婚することなどできそうにもない。

 貴族なのだから、家の利害関係だけで結ぶ婚姻もあるけれど。
 エモンスキー家にはそんな繋がりを重視した結婚が必要ではなかった。
 ミレイナの気持ちを第一優先にして相手を選べと言われたら、誰も選べなさそうだ。

(セドリックに気持ちを伝えて……。それから……)

 きっとミレイナに勝ち目はないだろう。それでも、当たって砕けなければ次には進めそうにもなかった。




 城から出ると、空には綺麗な満月が浮かんでいた。

 花の香りがふわりとミレイナを包み込む。花畑があるせいか、複数の花の香りが混じっていた。

「あら……?」

 風で吹かれた花片が、ミレイナのドレスに引っかかる。真っ赤な薔薇の欠片だった。

「エデンの丘にも薔薇が咲いているのかしら?」

 ミレイナは辺りを見回した。しかし、薔薇は見当たらない。遠くから遊びにきたのだろうか。

 ミレイナはエデンの丘に向かった。

 古城の奥の狭い通路を通ると、エデンの丘に繋がる。ミレイナはエデンの丘の入り口で、足を止めた。

「また見つけた」

 足元に二枚目の花片を見つけて拾い上げる。真っ赤な薔薇の花片を鼻に近づけた。
 強くて上品な香り。

「これって……」
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