推しの育て方を間違えたようです~推し活に勤しんでいたら、年下王子の執着に気づけなかった~
 無駄を嫌うセドリックならば、それくらいしてもおかしくないと思ったのだが、違ったようだ。

「殿下ったら、こんな朝早くにどうしたの?」
「エモンスキー家に来たことがなかったから」

 セドリックはいつもの調子で不機嫌そうに言う。

 王宮に比べたらエモンスキー家など小さな屋敷に過ぎない。他の貴族のように特別綺麗な庭園があるわけでもなければ、絵画をコレクションしているなどもなかった。よくある貴族の屋敷と言ってもいいだろう。

 出不精のセドリックがわざわざ準備をして来るほどのものだろうか?

(もしかして、お父様やお兄様に会いに来たのかしら?)

 セドリックは少しシャイなところがあるから、直接会いには行けず、ミレイナを通して会おうと思ったのかもしれない。

「ごめんなさい。今日、家族はみんな出払っているから、わたくししかいないのだけれど大丈夫かしら?」

 ミレイナは眉尻を下げて言った。

 今日は王太子主催で狩りが開催されているため、みんな出払っているのだ。ミレイナは血が苦手だとか適当なことを言って毎年断っていたら誘われなくなった。

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