推しの育て方を間違えたようです~推し活に勤しんでいたら、年下王子の執着に気づけなかった~
 セドリックはまだ社交デビュー前だから参加しないのだろう。

「ミレイナ以外には用はないから構わない」
「なら、お昼まで待ってくだされば会いに行きましたのに」
「それじゃあ遅いから」
「まあ。どうして?」
「今日はデートに行こうと思って」

 セドリックはさらりと言った。

 ミレイナは目を瞬かせる。セドリックには似合わない言葉だからだ。

「デート?」

(デートってあのデート? 他にデートってあったかしら?)

「ああ、君は知らないかもしれないけど、男女二人で出かけることだ」
「馬鹿にしないで。それくらいは知っているわ。わたくしだって一度や二度経験があるわ」

 前世で、という枕詞がつくのだが、それは言わないでおこう。五歳も年上なのに何も知らないのかと笑われるのは悔しかったのだ。

 しかし、セドリックの反応は想像していたものと違った。

「誰と?」
「……え?」
「君と一度や二度デートした相手だよ」
「そ、そんなの誰でもいいでしょう?」
「誰でもよくない。昨日だって面倒な男に捕まっていたじゃないか」

 ミレイナは目を瞬かせる。

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