推しの育て方を間違えたようです~推し活に勤しんでいたら、年下王子の執着に気づけなかった~
 セドリックは大きなため息を吐く。

 こうしてセドリックが折れる形でミレイナはセドリックの先生という名の友人の位置を手に入れたのだ。

 なぜ、セドリックに近づいたか? 理由は簡単だ。ミレイナの中にある前世の部分が、セドリックを近くで見たいと望んだから。

 もちろん、ヒロインにとって代わろうとか、そんな邪な考えがあってのことではない。前世のミレイナも「原作を大きく変えてはいけない」という想いが強いし、なにより五歳も年下の少年をたぶらかそうなど考えるわけがない。

 十五歳のミレイナから見て、十歳のセドリックは可愛いとは思うけれど恋愛対象ではない。

 誰よりも一番近くで彼の成長を見守り、この物語の傍観者となることを選んだのだ。

 そう、これは崇高な趣味なのである。

 幸いなことに前世の趣味はよかったようだ。ミレイナ自身も幼いとはいえ、美しいセドリックの友人となることは嫌ではなかった。
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