推しの育て方を間違えたようです~推し活に勤しんでいたら、年下王子の執着に気づけなかった~
第五話 舞踏会
セドリックの社交デビューの予定が早まった関係で、社交界は騒がしくなっていた。
王宮の舞踏会で社交デビューできるのは、王族のみという慣習があるためだ。セドリックがデビューする舞踏会に子息を参加させるためには、それよりも前に社交デビューさせる必要がある。
しかし、急いで社交デビューさせるにしても、格式ある夜会を選びたいと思うのが貴族なのだろう。
舞踏会までの一ヶ月で開かれた夜会で、上位貴族が主催した夜会は多くの人で賑わったらしい。
本来ならば婚活のため、ミレイナも参加したかった。しかし、連日のダンス練習の疲れから、夜会になど行くことはできなかったのだ。
しかし、ダンスの練習はセドリックのために必要なこと。一日たりとも休むわけにはいかなかった。
結果、ミレイナの婚活はまったく進むことなく、王宮の舞踏会の日になってしまったのだ。
「お嬢様、ほんっとうに素敵です!」
「ありがとう。けれど、こんなに派手なドレスで参加していいのかしら?」
「何をおっしゃいます! 第三王子殿下のパートナーとして参加するんですよ!? いつもみたいに『適当で』なんて許されません!」
アンジーの強い言葉に他のメイドたちも頷き合っている。
「主役は殿下よ。わたくしはオマケでしょう?」
「オマケだからといって、殿下の服の装飾が適当だったらお嬢様は怒るでしょう?」
たしかに。とミレイナは頷いた。オマケと言えど、セドリックと登場から一緒なのだ。ミレイナはずっと前にデビューした謂わば先輩。エスコートは男性がするものだけれど、実質ミレイナがエスコートするようなものだろう。
「そうね。そうよね。わたくしもオマケとして胸を張って着飾らないとダメね」
「そうです。ですから、もう少しチーク足しましょう。最近はほてり風のメイクがトレンドだそうですよ」
「メイクにも流行があるのね。難しいわ」
「ご安心を。そういうことは私が調べておきますから」
「アンジーは本当に頼もしいわ」
ミレイナは瞳を潤ませてアンジーの手を取った。アンジーが流れる前に溜まった涙を拭う。
こういうとき、しっかり者のアンジーがいることでどんなに助かったことか。感謝を伝えてもまだ伝えたりない。
「第三王子殿下がデビューなさったら、これから社交界は賑わいますね」
「ええ、そうなの。恋を知らない殿下も、とうとう恋する時期がくるのよ」
「殿下が……ですか?」
アンジーは首を傾げる。
アンジーも不思議なのだろう。あの、人間に興味がないセドリックが恋をするなど想像できないから。
ミレイナだって、前世の記憶がなければにわかには信じられないことだ。王宮に引きこもり、友達の一人も作ろうとしない彼が恋をするなんて。
この先の未来で、シェリーと恋仲になったことを知ればアンジーもうんと驚くだろう。その時は彼女に言うつもりだ「言った通りだったでしょう?」と。
「お嬢様、イヤリングはこちらでいかがでしょう?」
「あら、素敵なアメジスト。わたくしの好きな宝石だわ」
とくにこのアメジストはセドリックの瞳によく似ている気がする。
推しの色をつけると、いつもよりも気合いが入るのは気のせいだろうか。前世の血が騒ぐからかもしれない。
「奥様がお嬢様にとくださった装飾品の一つですよ。お好きかと思って用意しました」
「まあ! そうなのね。お母様にあとでお礼を言わないと」
ドレスや宝石の類いに関してはあまり興味がないため、アンジーに一任している。しかし、推しの色が入っているとなると話は別だ。このイヤリングは一軍入りにしようとミレイナは心に決めた。
王宮の舞踏会で社交デビューできるのは、王族のみという慣習があるためだ。セドリックがデビューする舞踏会に子息を参加させるためには、それよりも前に社交デビューさせる必要がある。
しかし、急いで社交デビューさせるにしても、格式ある夜会を選びたいと思うのが貴族なのだろう。
舞踏会までの一ヶ月で開かれた夜会で、上位貴族が主催した夜会は多くの人で賑わったらしい。
本来ならば婚活のため、ミレイナも参加したかった。しかし、連日のダンス練習の疲れから、夜会になど行くことはできなかったのだ。
しかし、ダンスの練習はセドリックのために必要なこと。一日たりとも休むわけにはいかなかった。
結果、ミレイナの婚活はまったく進むことなく、王宮の舞踏会の日になってしまったのだ。
「お嬢様、ほんっとうに素敵です!」
「ありがとう。けれど、こんなに派手なドレスで参加していいのかしら?」
「何をおっしゃいます! 第三王子殿下のパートナーとして参加するんですよ!? いつもみたいに『適当で』なんて許されません!」
アンジーの強い言葉に他のメイドたちも頷き合っている。
「主役は殿下よ。わたくしはオマケでしょう?」
「オマケだからといって、殿下の服の装飾が適当だったらお嬢様は怒るでしょう?」
たしかに。とミレイナは頷いた。オマケと言えど、セドリックと登場から一緒なのだ。ミレイナはずっと前にデビューした謂わば先輩。エスコートは男性がするものだけれど、実質ミレイナがエスコートするようなものだろう。
「そうね。そうよね。わたくしもオマケとして胸を張って着飾らないとダメね」
「そうです。ですから、もう少しチーク足しましょう。最近はほてり風のメイクがトレンドだそうですよ」
「メイクにも流行があるのね。難しいわ」
「ご安心を。そういうことは私が調べておきますから」
「アンジーは本当に頼もしいわ」
ミレイナは瞳を潤ませてアンジーの手を取った。アンジーが流れる前に溜まった涙を拭う。
こういうとき、しっかり者のアンジーがいることでどんなに助かったことか。感謝を伝えてもまだ伝えたりない。
「第三王子殿下がデビューなさったら、これから社交界は賑わいますね」
「ええ、そうなの。恋を知らない殿下も、とうとう恋する時期がくるのよ」
「殿下が……ですか?」
アンジーは首を傾げる。
アンジーも不思議なのだろう。あの、人間に興味がないセドリックが恋をするなど想像できないから。
ミレイナだって、前世の記憶がなければにわかには信じられないことだ。王宮に引きこもり、友達の一人も作ろうとしない彼が恋をするなんて。
この先の未来で、シェリーと恋仲になったことを知ればアンジーもうんと驚くだろう。その時は彼女に言うつもりだ「言った通りだったでしょう?」と。
「お嬢様、イヤリングはこちらでいかがでしょう?」
「あら、素敵なアメジスト。わたくしの好きな宝石だわ」
とくにこのアメジストはセドリックの瞳によく似ている気がする。
推しの色をつけると、いつもよりも気合いが入るのは気のせいだろうか。前世の血が騒ぐからかもしれない。
「奥様がお嬢様にとくださった装飾品の一つですよ。お好きかと思って用意しました」
「まあ! そうなのね。お母様にあとでお礼を言わないと」
ドレスや宝石の類いに関してはあまり興味がないため、アンジーに一任している。しかし、推しの色が入っているとなると話は別だ。このイヤリングは一軍入りにしようとミレイナは心に決めた。