推しの育て方を間違えたようです~推し活に勤しんでいたら、年下王子の執着に気づけなかった~
王族はみんな、この薔薇でプロポーズをしてきたという。
(なら、薔薇が枯れる前に元気になってもらわないと、一年持ち越しになってしまうだろ……)
結婚相手を探そうとしているミレイナが一年も待ってくれる気はしない。いつもセドリックの手からすり抜け、蝶のように空に舞うのだ。
ベスタニカ・ローズのことを知って、セドリックはすぐにでもプロポーズしようと決めた。
そう決めてからというもの、彼女は来ない。セドリックは彼女に振り回されっぱなしだった。
今にでも薔薇の花束を抱えてエモンスキー家へと乗り込みたいというのに。けれど、嫌われたくないというそれだけの理由でセドリックはミレイナに会いに行けないでいる。
セドリックの力を使えば、いつでも簡単にミレイナを誰にも見えないところにしまっておけるだろう。それをしないのは、偏にミレイナの心もほしいからだ。
本当は誰にも見せたくない。艶やかなドレスなんて着て外に出ないでほしい。
他の男の目にとまるたびにはらわたが煮えくり返る気持ちだ。
ミレイナの瞳がセドリックしか写さなければいいのに。そう何度思っただろうか。
婚約という形でいいから、ミレイナを縛る鎖が欲しかったのだ。
(もう七日も経っているし、もう一回くらい会いに行ってもいいか……?)
薔薇を睨みながら一人で押し問答を続けていると、背後で気配を感じた。
従者が腰に下げている剣に手を置く。
「……誰?」