【書籍化決定】推しの育て方を間違えたようです~第三王子に溺愛されるのはモブ令嬢!?~
シェリーと名乗った女は、ペラペラと身の上を語り出した。
曰く、自身はエント家の遠い親戚であり、引き取ってくれたエント家には病弱な姉がいたということ。そこまで黙って聞いていたが、長く掛かりそうなことに嫌気がさし、セドリックは話しを遮った。
「僕は公務があるから、話があるならその男にして」
「あのっ!」
セドリックは従者に「よろしく」と言って王宮に逃げ帰ってきたのだ。
従者がセドリックの部屋に戻ってきたのは、二時間後のことだった。薔薇の香りをまとい、げっそりとした様子であることから、相当大変だったのだろう。
セドリックは顔を上げて従者を見ると、すぐに手元に視線を戻した。
「殿下、ひどいですよ。シェリーさんの話、長くて重くて大変だったんですからね」
「へぇ」
シェリーがどんな事情を抱えていようと、興味はない。元々他人の身の上話に耳を傾ける性格ではなかった。赤の他人ともなれば尚更だ。
ミレイナであれば、話は別だが。彼女のことであれば、朝食べた食事の話でも聞き逃したくはないと思うほどだ。
「結構可哀想な子でしたよ、シェリーさん」
「……興味でも湧いた?」
「そ、そんなわけないでしょう! 十歳も年下の女の子ですよ!?」
従者が声を上げる。