【書籍化決定】推しの育て方を間違えたようです~第三王子に溺愛されるのはモブ令嬢!?~
 サシャの側に控えていた侍女が小さく咳払いをする。彼女は思い出したように声を上げた。

「あっ! 長旅でお疲れですよね。お部屋にご案内します」


 ◇◆◇


 殿下。

 お元気ですか? わたくしは昨日無事、フリック家の領地に着いたところです。

 こんなに遠出をしたのは初めてで、お尻が痛くなってしまったわ。殿下が来るときは沢山クッションを用意しておいたほうがいいと思うの。わたくしは今、帰りのためにクッションを集めてもらっているところよ。

 フリック家の領地は自然豊かで本当に穏やかな場所なの。

 今日はサシャに『エデンの丘』という素敵な場所に連れて行ってもらったのよ。……あ、サシャというのはビルの婚約者の子なの。

 もっとも天国に近い場所なのですって。本当に素晴らしい場所だったわ。どこを見てもお花畑なの。殿下にも見せてあげたかった。殿下はお花には興味がないかもしれないけれど、この景色を見たらびっくりすると思うわ。

『エデンの丘』には有名なジンクスがあるのですって。
 ここでプロポーズをすると、末永く幸せに暮らせるのよ? 素敵でしょう?

 いつか殿下に運命の人が現れたら、丘の真ん中にあるガゼボをおすすめするわ。




 ミレイナは手を止めて、手紙を見直した。

(運命の人……。きっと、もう現れているわね)

 今ごろ、シェリーに恋人のふりをすることを提案しているはずだ。ミレイナがお膳立てしなくても運命の歯車は回り始めている。

 少しだけ胸が痛かった。
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