快晴の空に君の笑顔を探す
最後の石から岸までは少し距離がある。

勢いをつけて跳ぼうと間を置くと、岸の向こう側から旭陽の手が伸びてきた。

「え……」
「はやく」

不機嫌そうな声は変わらないけれど、伸ばされた手に私は恐る恐る手のひらを重ねる。

迷いもなくキュッと握られた手のひらは、私が跳ぶのと同時に優しく引かれて、岸へとバランスよく着地させてくれた。

「あ、ありがと」
「別に。いつものことだろ」

当然のように言って、前を歩く旭陽に驚く。

最後の石を渡るとき、手を伸ばしてくれるのは、小学生からの決まりだった。

毎日毎日、旭陽が差し出してくれる手を頼りに跳んでいた。

忘れていないどころか「いつものこと」と表現してくれたことが嬉しくて、私は駆け足で旭陽を追った。

私が追い求めている輝いていた過去は、思っているほど遠く昔のことではないのかもしれない。

「私、久しぶりにこの道通った」
「まじ?俺ずっとここ使ってるわ」

そこから何気なく会話が始まって、声を無理やり落ち着かせた会話は、ぎこちないものだったけれど。

それでも、旭陽の雰囲気が少し明るくなったのを感じて、私は安心していた。

そしてなにより、大きな一歩を踏み出せたことが嬉しくて堪らなかった。
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