快晴の空に君の笑顔を探す
短すぎる自分のタイムリミットは、正直全く実感が湧かなかったのだけど。

家族から笑顔が消えてしまうことは、過去を思い返せば容易に想像できて、それが怖くて仕方なかった。

「何、言ってんの?大丈夫だよ、余命なんてほら、ただの目安だって言うじゃん、ね?」

あまり覚えていないけれど、実感のわかないぐちゃぐちゃの頭のままで、両親の涙に気付かないふりをして私はとにかく笑っていたと思う。

そんな私に寄り添ってくれたのは、姉の莉音ちゃんだった。

家族を帰して、病室でひとり、頭を抱えていたところに、莉音ちゃんは戻ってきた。

「あれ?莉音ちゃんどしたの?忘れ物?」

へらりと口角をあげた私を莉音ちゃんは静かに抱きしめた。
その力の強さに、無理に入れていた表情筋の力が抜けていく。

「澪音。もう頑張らなくていいから」

小児がんが分かったとき、小学6年生だった莉音ちゃんは、酷く疲弊していた。
勉強も部活も出来て、県内で一番の高校の中学受験を控えていた自慢の姉は、あっという間に萎んでいった。

それも辛かったのだ。

ずっとそばに居てくれて優しい姉だけれど、私のせいで莉音ちゃんの人生が壊れていくのは見ていられなかった。
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