かつて神童と呼ばれたわたしも、今では立派な引き籠りになりました。ですので殿下、わたしを日の当たる場所に連れ出すのはお止めください!
【7】殿下はストレートに言いすぎです!
意味が分からない!
どうしてレイト様が、わたしの部屋に居るのか!
「日の光が嫌だと言っていただろう? だから今日は室内から攻めてみることにしたんだ」
「お母様!? お母様!! 不審者がいます! わたしの部屋に不審者がー!!」
ドヤ顔で語ることではない!
というかわたしの部屋にいる理由になっていない!
「きみのご両親なら、仕事に行くと言って出掛けたぞ」
「そんなはずありません! 今日の仕事は休みですから下にいるはず!」
「きっと、ぼくたちを二人きりにしようと気を利かせてくれたんだろうな。素晴らしいご両親じゃないか」
「こんなことで気を利かせなくてもいいのにっ!!」
お父様とお母様、恨みますよ! 絶対に恨みますから!
「しかしまさか、ぼくの想いを伝える前にきみの部屋に入ることを許されるとは思ってもみなかったぞ」
「部屋の主は許可していませんけどね!」
わたしの指摘を華麗にスルーし、レイト様は室内を見回す。
わたしが寝ている間に既に見ているだろうけど、改めて自分の部屋を見られると恥ずかしすぎてたまらない。今すぐ自分の部屋に引き籠ってしまいたい気分だけど、しかし残念、ここがわたしの部屋だった。
「……あの、レイト様」
「うん? どうした?」
「何故、こんなにも強引にわたしなんかに構うんですか?」
王族の方が、それも第一王子であるレイト様が、ただの平民であるわたしなんかのために、わざわざ時間を割いて会いに来る……しかもわたしの部屋にまで入ってくる始末だ。
「まだ、気付いていないのか?」
「うーん……レイト様がわたしの部屋に押し入るようなストーカーであることぐらいしか分かりません」
「違うからな!? いや、違わないけども! ぼくは決してストーカーではないぞ!」
確かに、ストーカーから不法侵入者に格上げした方がいいかもしれない。
「リリア、聞いてくれ」
息を整え、レイト様は真面目な表情を作ってみせた。
そして、わたしに向けて言葉を発する。
「リリア・ノルトレア、ぼくはきみのことが好きだ」
「寝てください」
「何故!?」
「寝言は寝て言うものですよ、レイト様」
「寝言じゃない! ぼくは本気だぞ!」
「寝言ではないなら、冗談が過ぎます! 一体どこの殿下がただの凡人で引き籠りのわたしなんかに好意を寄せる要素があると言うんですか!」
「全部だ!!」
「ぜっ」
――いやいや、全部って、そんなまさか。
「う、嘘です! そんなの嘘に決まってますよ!」
「嘘じゃない、本当だ! 確かに昨日、きみと再会するまでのぼくは、きみに好意を寄せるというよりも……神格化していた」
「神格化!? 引き籠りのわたしをですか!?」
「ああ。だがな、実際に顔を合わせてみて、その考えは変わったんだ……」
「神格化するのは間違いだったと、つまり引き籠りであるわたしを見たことでガッカリしたということですね」
「違う」
わたしの台詞を受け、キッパリと否定する。
そしてレイト様は再び真正面からわたしの顔を見た。
「リリア・ノルトレア、きみは神童でも凡人でもない……きみは、どこにでもいるような一人の女の子なんだ」
「女の子……?」
「そうだ。そしてぼくは、そんなきみのことを好きに……いや、大好きになったんだ!」
「レイト様、やはり目の病院に行かれた方が……」
「心配無用だ、きみの可愛い顔ならしっかりと見えている!」
「いやいや寝起きの顔ですけど!」
「うん、それも素晴らしいな! ずっと見ていたいぞ」
「この顔に対してべた褒めは止めて!」
ダメだ、恥ずかしすぎて顔が真っ赤に染まってしまいそうだ。
「照れるリリアもいい、実に魅力的だな。昨日と今日、まだ二日だというのに、ぼくは既にたくさんの表情を見ることができている。ああ、なんと幸せなことか……」
「レイト様、もう限界です! お願いですから今すぐ病院に行ってください! そしてわたしを一人にして引き籠らせてください!」
「無論、断る! きみを一人にはさせないと心に決めたからな!」
そう言うと、レイト様は得意気に白い歯を見せる。
それを見たわたしはというと……。
「勘弁してください……」
当然、ため息を吐くのだった。
どうしてレイト様が、わたしの部屋に居るのか!
「日の光が嫌だと言っていただろう? だから今日は室内から攻めてみることにしたんだ」
「お母様!? お母様!! 不審者がいます! わたしの部屋に不審者がー!!」
ドヤ顔で語ることではない!
というかわたしの部屋にいる理由になっていない!
「きみのご両親なら、仕事に行くと言って出掛けたぞ」
「そんなはずありません! 今日の仕事は休みですから下にいるはず!」
「きっと、ぼくたちを二人きりにしようと気を利かせてくれたんだろうな。素晴らしいご両親じゃないか」
「こんなことで気を利かせなくてもいいのにっ!!」
お父様とお母様、恨みますよ! 絶対に恨みますから!
「しかしまさか、ぼくの想いを伝える前にきみの部屋に入ることを許されるとは思ってもみなかったぞ」
「部屋の主は許可していませんけどね!」
わたしの指摘を華麗にスルーし、レイト様は室内を見回す。
わたしが寝ている間に既に見ているだろうけど、改めて自分の部屋を見られると恥ずかしすぎてたまらない。今すぐ自分の部屋に引き籠ってしまいたい気分だけど、しかし残念、ここがわたしの部屋だった。
「……あの、レイト様」
「うん? どうした?」
「何故、こんなにも強引にわたしなんかに構うんですか?」
王族の方が、それも第一王子であるレイト様が、ただの平民であるわたしなんかのために、わざわざ時間を割いて会いに来る……しかもわたしの部屋にまで入ってくる始末だ。
「まだ、気付いていないのか?」
「うーん……レイト様がわたしの部屋に押し入るようなストーカーであることぐらいしか分かりません」
「違うからな!? いや、違わないけども! ぼくは決してストーカーではないぞ!」
確かに、ストーカーから不法侵入者に格上げした方がいいかもしれない。
「リリア、聞いてくれ」
息を整え、レイト様は真面目な表情を作ってみせた。
そして、わたしに向けて言葉を発する。
「リリア・ノルトレア、ぼくはきみのことが好きだ」
「寝てください」
「何故!?」
「寝言は寝て言うものですよ、レイト様」
「寝言じゃない! ぼくは本気だぞ!」
「寝言ではないなら、冗談が過ぎます! 一体どこの殿下がただの凡人で引き籠りのわたしなんかに好意を寄せる要素があると言うんですか!」
「全部だ!!」
「ぜっ」
――いやいや、全部って、そんなまさか。
「う、嘘です! そんなの嘘に決まってますよ!」
「嘘じゃない、本当だ! 確かに昨日、きみと再会するまでのぼくは、きみに好意を寄せるというよりも……神格化していた」
「神格化!? 引き籠りのわたしをですか!?」
「ああ。だがな、実際に顔を合わせてみて、その考えは変わったんだ……」
「神格化するのは間違いだったと、つまり引き籠りであるわたしを見たことでガッカリしたということですね」
「違う」
わたしの台詞を受け、キッパリと否定する。
そしてレイト様は再び真正面からわたしの顔を見た。
「リリア・ノルトレア、きみは神童でも凡人でもない……きみは、どこにでもいるような一人の女の子なんだ」
「女の子……?」
「そうだ。そしてぼくは、そんなきみのことを好きに……いや、大好きになったんだ!」
「レイト様、やはり目の病院に行かれた方が……」
「心配無用だ、きみの可愛い顔ならしっかりと見えている!」
「いやいや寝起きの顔ですけど!」
「うん、それも素晴らしいな! ずっと見ていたいぞ」
「この顔に対してべた褒めは止めて!」
ダメだ、恥ずかしすぎて顔が真っ赤に染まってしまいそうだ。
「照れるリリアもいい、実に魅力的だな。昨日と今日、まだ二日だというのに、ぼくは既にたくさんの表情を見ることができている。ああ、なんと幸せなことか……」
「レイト様、もう限界です! お願いですから今すぐ病院に行ってください! そしてわたしを一人にして引き籠らせてください!」
「無論、断る! きみを一人にはさせないと心に決めたからな!」
そう言うと、レイト様は得意気に白い歯を見せる。
それを見たわたしはというと……。
「勘弁してください……」
当然、ため息を吐くのだった。