異母妹にウェディングドレスを汚されましたが、本当に大切なものには触ることも許しません。
 高遠優月(ゆづき)は、自宅の応接間の入り口で足を止めた。

 どうして、麗奈が私のウェディングドレスを着ているの――――?

 ウェディングドレスは今日届くことになっていた。そのため、優月は短大から急いで帰ってきた。
 しかし、ドレスが入っていたであろう白い化粧箱も、それに巻かれていたであろう白いリボンも、無残に床に投げ出され、そのドレスは異母妹、麗奈の身を包んでいる。
 中から声が聞こえてくる。

「まあ、素敵ですわ、麗奈さま、よくお似合いです」
「まるで、麗奈さまのためにあつらえたドレスのよう」
 
 使用人の声だ。続いて聞こえてくるのは、麗奈の舌ったらずな声。

「そんなに似合うかしらぁ? 私は優月の方が似合うと思うけどぉ」
「優月さまより麗奈さまのほうが似合いますわ」
「優月さまは麗奈さまのように可愛らしくはありませんもの」

 麗奈は小柄で顔も可愛らしい。一方、優月は全体的に地味だ。
 確かに麗奈はウェディングドレスを着こなしているように見える。けれども、どれだけ麗奈が着こなそうと、それは優月のドレスだ。

(私のドレスを勝手に着るなんて、いくらなんでもひどいわ……!)

「ねえ、隆司さんはどうぉ? 私より、優月のほうがよく似合うわよねぇ?」

 優月は目を見張る。

(まさか、隆司さんもいるの?)
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