異母妹にウェディングドレスを汚されましたが、本当に大切なものには触ることも許しません。
隆司は優月の婚約者だ。
父親の決めた相手だが、いつも優月を大切にしてくれており、ドレス選びにも毎回のように付き合ってくれた。どんなデザインでも似合うと言ってくれながらも、真剣な顔で意見を添えてくれた。
(隆司さんは、可愛らしいデザインも私に似合うといってくれた。生地だって柔らかいシフォンの素材が私によく似合うって)
優月からはその姿は見えないが、隆司の声が聞こえてきた。
「麗奈ちゃん、それは優月ちゃんのだよ」
それを聞いて、優月の怒りは爆発寸前で治まった。しかし、続く言葉に優月は耳を疑う。
「でも、麗奈ちゃんの方が似合うよね。優月ちゃんはあのとおり地味だから」
そのとき、姿見越しに麗奈と目が合った。麗奈は優月に向けて、くすっと笑った。
優月からサーッと血の気が引いた。
麗奈は弾んだ声で言った。
「隆司さんまでそんなことを言ったら怒るわよぉ」
「ふふ、麗奈ちゃんは怒っても可愛いだけだよ」
優月の握った手はぶるぶると震えてくる。
(隆司さんまで私をないがしろにするの?)
そのとき、優月の後ろからスリッパの音が聞こえてきた。声をかけてきたのは、麗奈の母親、美智子だ。