異母妹にウェディングドレスを汚されましたが、本当に大切なものには触ることも許しません。
「ゆき、にいさん………」

 優月はうっすらと目を開けると由紀也を見るなり、ほっと安心するようにほほ笑んだ。
 由紀也に甘やかな情欲が湧き起こる。優月を一人の女性として愛する予感があった。
 優月を優しく抱きしめる。

「優月、おはよう」

 優月は恥じらうように頬を染めて、上目遣いに見た。

「由紀兄さん、おはよう」
「俺は怖くない?」
「えっ」
「昨日、あんなことがあったのに、俺は怖くない?」
「由紀兄さんのそばは安心する。いやじゃなければ、そばにいさせて」

 優月は小さい子が年長者に甘えるような顔つきをしている。

(優月は俺と血がつながってないのを知らないんだな)

 由紀也と優月の母親は連れ子同士だった。よって、由紀也と優月の間にも血縁関係はない。
 しかし、優月はおそらくそのことを知らないのだ。

(だから、ネグリジェ一枚で俺のベッドで平気でいられるんだ。俺が「そういう」目で優月を見ることができることも知らずに。でも、それを告げるのはまだ先にしよう。俺はまだ安心できるだけの存在でいよう。昨日、あんなことがあったばかりなのだから)

「わかった。気が済むまでそばにいるといい。ここで一緒に寝てもいいんだよ」

 由紀也はただ安心できる存在として、優月のそばにいることにした。
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