異母妹にウェディングドレスを汚されましたが、本当に大切なものには触ることも許しません。
高遠の屋敷に優月が戻ったことが伝えられれば、市太郎に美智子が出てきた。隆司までもいた。
市太郎はどかどかと足を踏み鳴らして出て来た。
昨日の暴力を思い出せば、優月の身がこわばる。そんな優月を励ますように由紀也が肩を抱いてきた。
市太郎は、優月を見据えて言った。
「優月、帰ってきたか。謝れば許してやらないでもない」
隆司も言ってくる。
「その人、叔父さんなんだってね。戻ってきたということは、叔父さんにも俺たちのことを理解してもらえたってことかな?」
市太郎も隆司も、優月に何をしでかしたのかも自覚がないようだった。昨日のようなことがあってまた戻ってくるとでも思っているのだろうか。婚約を継続するとでも思っているのだろうか。
優月は二人を見返した。
「わたし、戻ったんじゃないわ……。荷物を取りに来たの。もうこの家には戻らないわ」
「優月! 隆司くんは、お前の我が儘を許すと言ってるんだ!」
由紀也が優月に耳打ちする。
「この人たちは無視して入ろう」
優月と由紀也が靴を脱いで上がれば、市太郎が怒鳴る。
「入っていいのは優月だけだ! 由紀也、お前は帰れ!」
優月は由紀也のシャツをぎゅっと握る。
(いやよ、行かないで。一人にしないで)
由紀也は安心させるように優月の肩を抱く手に力を込めた。
「優月、大丈夫だ、俺がついてる」
「何だと?」
「市太郎さん、どくんだ」
市太郎は由紀也の低い声に気おされたのか、一瞬、たじろいだ。その隙をついて、奥に向かう。
隆司の手が伸びて来れば、「優月に触るな」との由紀也の声に、隆司の手はビクッと引っ込んだ。
優月の部屋に入ってドアを閉めると、ゴンゴンと打ち鳴らす音が聞こえてきた。
喚き声がする。
「優月、開けろ。その男に騙されるな。優月が心根を直せば、パパは許してやるんだぞ!」
「優月ちゃん! 開けて!」
由紀也がドアを抑えている間に、荷物をまとめてしまわなければならない。
もうこの部屋に戻らないとなれば、何を持っていくべきなのか迷ってしまう。
「優月、買えるものは持って行かなくても良い。替えの利かないもの、愛着のあるものだけでいい」
由紀也の言葉に、優月は、卒業アルバムに母と祖父母の写真、短大のノートなどを、キャリーバッグに詰めていった。
部屋を出れば、市太郎と隆司らに前を塞がれるも何とか押しのける。
「優月さま」
「優月さま、お待ちください」
次々と使用人らが立ちふさがるも、それらも押しのけて玄関を出た。
自動車に乗ってもなお追いかけてきたが、すぐに姿は見えなくなった。
市太郎はどかどかと足を踏み鳴らして出て来た。
昨日の暴力を思い出せば、優月の身がこわばる。そんな優月を励ますように由紀也が肩を抱いてきた。
市太郎は、優月を見据えて言った。
「優月、帰ってきたか。謝れば許してやらないでもない」
隆司も言ってくる。
「その人、叔父さんなんだってね。戻ってきたということは、叔父さんにも俺たちのことを理解してもらえたってことかな?」
市太郎も隆司も、優月に何をしでかしたのかも自覚がないようだった。昨日のようなことがあってまた戻ってくるとでも思っているのだろうか。婚約を継続するとでも思っているのだろうか。
優月は二人を見返した。
「わたし、戻ったんじゃないわ……。荷物を取りに来たの。もうこの家には戻らないわ」
「優月! 隆司くんは、お前の我が儘を許すと言ってるんだ!」
由紀也が優月に耳打ちする。
「この人たちは無視して入ろう」
優月と由紀也が靴を脱いで上がれば、市太郎が怒鳴る。
「入っていいのは優月だけだ! 由紀也、お前は帰れ!」
優月は由紀也のシャツをぎゅっと握る。
(いやよ、行かないで。一人にしないで)
由紀也は安心させるように優月の肩を抱く手に力を込めた。
「優月、大丈夫だ、俺がついてる」
「何だと?」
「市太郎さん、どくんだ」
市太郎は由紀也の低い声に気おされたのか、一瞬、たじろいだ。その隙をついて、奥に向かう。
隆司の手が伸びて来れば、「優月に触るな」との由紀也の声に、隆司の手はビクッと引っ込んだ。
優月の部屋に入ってドアを閉めると、ゴンゴンと打ち鳴らす音が聞こえてきた。
喚き声がする。
「優月、開けろ。その男に騙されるな。優月が心根を直せば、パパは許してやるんだぞ!」
「優月ちゃん! 開けて!」
由紀也がドアを抑えている間に、荷物をまとめてしまわなければならない。
もうこの部屋に戻らないとなれば、何を持っていくべきなのか迷ってしまう。
「優月、買えるものは持って行かなくても良い。替えの利かないもの、愛着のあるものだけでいい」
由紀也の言葉に、優月は、卒業アルバムに母と祖父母の写真、短大のノートなどを、キャリーバッグに詰めていった。
部屋を出れば、市太郎と隆司らに前を塞がれるも何とか押しのける。
「優月さま」
「優月さま、お待ちください」
次々と使用人らが立ちふさがるも、それらも押しのけて玄関を出た。
自動車に乗ってもなお追いかけてきたが、すぐに姿は見えなくなった。