異母妹にウェディングドレスを汚されましたが、本当に大切なものには触ることも許しません。
 ベッドに伏せている優月に、ノックが聞こえてきた。

「優月ちゃん、入ってもいいかな?」

 隆司だった。
 さっきのことですっかり隆司から気持ちが離れていた。

(もうこの人とは結婚したくない)

 呆れるほど冷めていた。
 引っ込み思案な優月をいつもリードしてくれる隆司にほのかな憧れを抱いていたが、それは霧散していた。

「入らないでください」
「入るね」

 隆司は優月の制止にもかかわらずドアノブを回して入ろうとした。その強引さはこれまでなら頼りになると感じたかもしれなかったが、今では不愉快なだけだ。

(鍵をかけててよかった)

 隆司はしばらくガチャガチャとドアノブを回していた。

「優月ちゃんがあのドレスを着たところ、見てみたいな。きっと似合うと思う」

 何を今更。

「麗奈ちゃんだって、悪気があってやったわけじゃないし、優月ちゃんのほうが似合うって遠慮してたよ」

(ああ、この人にはそう映ったのね)

 隆司にも麗奈は天真爛漫にしか見えないのだろう。
 麗奈に悪気があったのは見え見えだし、遠慮するならそもそもドレスを着たりはしない。

「機嫌直して出て来てほしいな」

(機嫌が悪くなったわけじゃないの、もう嫌気がさしてるの) 

 優月はイヤホンを耳に入れた。もう声も聞きたくない。

(パパに、破談にするようにすぐに頼まないと)
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