生まれ変わるきっかけをくれたのは彼でした~元同級生からの甘い溺愛〜

 二人一緒に電車に乗り込んだはいいものの、私は昨日のことが気まずくて、うまく話すことができなかった。


「な、鳴海くん、会社この辺なんだね」
「あ、いや、取引先がこの辺で、直帰するところだったんだ」
「そ、そっか…」
「…………」
「…………」


 き、気まずいっ!謝らなきゃ、昨日のこと…。

 書き置きはして出てきたけど、急に帰るなんてあまりに失礼だよね…。


「佐藤さん、」
「あ、あの鳴海くんっ」


 私が口を開くのと、鳴海くんの言葉が被ってしまった。
「あ、ごめん。佐藤さんからどうぞ」
「え、いや鳴海くんから…」
「いや、佐藤さんの話聞きたいから佐藤さんから」
「あ、じゃ、じゃあ…」


 譲り合った結果、私から先に話すことにする。


「な、鳴海くん、昨日は急に帰ってごめんなさい!とんだ失礼なことをしてしまって…」
「え、いや俺こそ急にごめん。佐藤さんに会えたのが嬉しくて、この歳にもなって舞い上がってしまって」


 舞い上がる…!?う、か、かわいい…。

 照れたように顔を背ける鳴海くんが、なんだかやたらと可愛らしかった。

 私のこと、本当に好きなんだ…。

 冗談でも私のことを好き、なんて言ってきた人は今まで一人もいなかった。


「鳴海くん、私のこと、本当に好きなの…?」


 小さく呟いた言葉は、けれどしっかり彼に届いたようで、鳴海くんは私の手をぎゅっと握った。


「うん、もちろん好きだよ」


 優しく握られた手から、心地よい温かさが伝わってくる。

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