生まれ変わるきっかけをくれたのは彼でした~元同級生からの甘い溺愛〜

4、擦れ違い


 週明けに出社すると、私を見るなり清水さん達が慌てて駆け寄ってきた。


「ちょっと佐藤さん!」
「あ、お、おはようございます…」
「あの人誰なの!?」
「え…?」


 なんのことか分からず私が首を傾げていると、清水さんは痺れをきらしたように詰め寄ってくる。


「土曜日に一緒にいた男の人!佐藤さん、映画館に行ったでしょう!?」
「え…」


 清水さん達に見られてたんだ…。


「まさか佐藤さんの彼氏!?」
「あ、」


 うん、と答えようとして、私の小さな声は賑やかな清水さん達の声にかき消された。


「そんなわけないよね!佐藤さんとあの人じゃ、全然釣り合わないもん」
「そうよ、佐藤さんがあんなイケメンと付き合えるわけないって」
「え…、あの…」
「ねえねえ佐藤さん!あの人誰?私に紹介してよ」
「え…?」
「いいでしょ?この前の合コンで出会った男、全然良くなかったんだもん。自分の自慢ばっかりで、ご飯も割り勘にしてくるし。信じられない。佐藤さんもそう思うでしょ?」


 清水さんの剣幕に「は、はぁ…」と曖昧な返事しかできない。


「ね?だからあの人紹介して!お願いっ!佐藤さんなら優しいから紹介してくれるよねっ!ねっ!お願い!」
「え、ええっと…」


 私が返答に困っていると、通りずがった男性社員達が、薄笑いを浮かべて声を掛けてくる。


「何か知らないけど、清水さんがこんなにお願いしてるんだから、なんとかしてやれよ佐藤」
「そうだよ、清水さんの力になってやれって」


 全く話も分からないくせに、清水さんの味方になる男性社員達。

 いつもこうだ。

 美人で綺麗な清水さんがお願いすれば、なんでも通ってしまうのだ。


「わ、分かった……」


 私は渋々そう答えるしかなかった。


「本当ぉ!?ありがとう~!」


 喜ぶ清水さんの笑いは私を馬鹿にしている気がして、やっぱり苦手だった。

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