生まれ変わるきっかけをくれたのは彼でした~元同級生からの甘い溺愛〜
そんな折、後輩の男性社員から声を掛けられた。
「佐藤さん」
「はい…?」
「今晩、空いてたりしますか?」
「え?」
「よければ一緒にご飯なんてどうですか?」
「え、え?」
何故私に?
疑問がそのまま顔に出ていたのか、彼は慌てて付け足した。
「後輩の女性社員も来まして、その女性社員が佐藤先輩のファンだとかで」
「ファ、ファン??」
後輩社員の言葉にますます疑問が大きくなる。
特に大きなミスはしないけれど、後輩社員に一目置かれるほどの優秀さはないと思う。
そつなく問題なくやり過ごしているだけで。
疑問は膨らむばかりだったけれど、なんとなく真意も気になって、私は渋々OKの返事を出した。
連れて来られたのは、何だか高そうな、個室のある日本食のお店だった。
その一室に案内されて、他の社員を待ったのだけれど、待てど暮らせど誰かが来る気配はなかった。
「えっと、みんなはまだですか?」
私の質問に、男性社員は観念したように頭を下げた。
「すみません!他の社員は来ません!」
「へ…?」
男性社員の言葉に、私がぽかんとしていると彼はこう続けた。
「実は俺、佐藤さんのこと気になってて、一緒に食事に行きたかったんです。でも佐藤さん、ガード堅そうだし…」
「私と、食事に、ですか…?」
全く意味が分からなくて、私はますます首を捻るばかりである。
私のあまりの鈍さに観念したのか、男性社員はこうはっきりと告げた。
「…俺、佐藤さんめちゃめちゃタイプなんですよ…だから、その…」
私は目をぱちくりさせながら男性社員を見た。
私に好意を寄せてきたのは鳴海くんだけで、今までこんなこと一度もなかった。
確かに最近少し痩せて、変わってきたとは思うけれど、こんなにあからさまな反応があるだろうか。
突然二人になってしまった食事会に、私は少し相手の様子を窺いながらも、ちびちびとお酒を飲んだ。
しかし彼の表情や言葉からして、嘘でわざわざこんないいお店に連れて来てくれたわけではなさそうだった。
ほ、本当なんだ…。
鳴海くんに続いて後輩社員まで私に好意を持ってくれているなんて、今までの人生で全くあり得ないことで俄かには信じがたかった。
お酒とお料理を嗜んで、最後にお手洗いに立って席に戻った。
「佐藤さん、お水どうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
何から何までもてなしていただいて、申し訳なく思いつつも、私達はお店を出た。