小林、藝大行くってよ
「誕生日パーティって……でも彼女いるなら当日は難しいかもよ?」
「せやから学校でするんや!」
「え、学校で?」
「あんま仰々しくパーリーしても、浅尾っちは絶対ノリ悪いやろ?ほなら、ほんのちびっと“特別な日”を演出したろ思てな。ヒデも協力してや!」
「い、いいけど……」
「よっしゃ!燃えてきたでー!」

 そうと決まれば、善は急げや。おれは早速、家に帰ってから浅尾っち誕生日パーリーのプランを練った。

 誕生日を祝うんは“生まれてくれてありがとう、出会ってくれてありがとう”っちゅーのを伝えるためや。つまりPASSION and LOVEをGIVE and TAKEする儀式!それが!誕生日パーリーやねんッ!

 今は地球の裏側におるような距離感やけど、これで絶対に距離が縮まるはずや。おれはやっぱり、浅尾っちと仲良うなりたい。おれのシックスセンスが言うてんねん。浅尾っちはおれの人生において、めちゃくちゃ重要なキーパーソンやって。

 もちろんヒデもそうや。なんちゅーか、かけがえのない存在になる予感がバチバチしとる。理屈やのうて野生の勘や!
 この誕生日パーリーを通じてヒデと浅尾っちとの絆が深まり、切磋琢磨しながら己を磨いていく……これぞおれが求める青春ッ!

「……ちゅーわけでな、ヒデは浅尾っちをここへ連れてきてほしいんや」

 翌日の昼休み。おれとヒデは学食で昼飯を食いながら作戦会議を開いた。

 藝大の学食“藝大食楽部(くらぶ)”は、アレルギーや宗教上の問題に考慮したメニューも置いとる親切なところや。そして安い。日替わり定食は税込600円、ご飯大盛りはプラス30円。ボリュームもあるし、ほんま学生の味方やで。
 今日の日替わりメニューは四万十鷄の唐揚げやった。おれとヒデは迷わず日替わり定食の食券を買うたよな。

「浅尾を連れてくるって……どうやって?」
「それはヒデが考えることやで。おれより浅尾っちと仲ええやん」

 学食は外のテラスにもテーブル席が設けてある。そこでささやかな誕生日パーリーを開催する作戦やねん。

「うーん……浅尾って学食で食べないと思うんだよね……ていうか昼ご飯自体、食べてない気がするし」
「なんやて?不健康やな」
「野菜ジュースばっかり飲んでるんだよ。固形物食べると吐いちゃうとかで」

 確かに、浅尾っちはいつも青白い顔しとる。しかし固形物食うと吐くて……やばいんちゃう?なんかの病気か?
 気になるが……おれは絶対前作は読まんぞ!浅尾っちのラブラブチュッチュを見せつけられる恋愛小説なんて!ジェラシーッ!

「固形物あかんのやったら、ケーキは食われへんかな……」
「浅尾は甘いものそんなに好きじゃないよ。バレンタインで女子からチョコ貰った時に言ってた」
「バレンタインでチョコを貰ったやと!?うらやまけしからんッ!……いやそれは置いといて、ほなら浅尾っちは何が好きなんや?」
「そこまでは知らないけど……」
「あーヒデちゃんと一佐くんだぁー」

 のぉーんびりした声が割り込んできた。振り返ると、タコライスを持ったヨネがいつものニコニコ顔で立っとる。タコライスも美味そうやな。
< 17 / 55 >

この作品をシェア

pagetop