小林、藝大行くってよ
「と、とりあえずここに座って……」
ヒデは若干オドオドしながら、外のテラス席へ浅尾っちを誘導した。よし、所定の位置についたな。グッジョブやでヒデ!
おれはヨネに目配せをして頷いた。PASSION and LOVE大作戦……いよいよスタートやッ!
「で?相談ってなんだよ」
「えぇっと…………こ、この前“洗い”を試してみたんだけど、いまいちしっくりこなくて……その……」
ヒデが必死に会話を繋げようとしとる。浅尾っちを引き留めるには絵の話が一番やしな。
ちなみに“洗い”っちゅーのは日本画の技法のひとつで、塗った岩絵の具をお湯で落とすことや。全部が落ちるんやのうて、ええ感じに残るさかい、洗いを多用しとる作家も多い。色に変化をつけるために、おれもようやっとるで。
「しっくりこねぇって、どんな風に?」
さすが浅尾っち。真剣にヒデの話を聞いてやっとる。なんやかんや言うても友達思いなんやなぁ……って、胸キュンしとる場合ちゃうわ。完成した“愛情しぼりたてミックスジュース”を浅尾っちに献上せねばッ!
ヨネがトレイに2つのミックスジュースを置き、おれはおもむろにアコースティックギターを取り出した。さぁ、ちびっとスペシャルな時間のはじまりやで!
「……はぁっぴばぁすでぃー……とぅーゆぅー!」
美声を響かせながら適当にギターをかき鳴らし、ヨネとともに浅尾っちのテーブルへ近づく。ちなみにBirthdayのthの発音は、上下の前歯で舌先を挟むようにするんやで。覚えときや。
ちょうど昼メシ時。適度にギャラリーがおって、燃えるシチュエーションや。めっちゃ注目集めとるでぇ!京都が産んだエンターテイナーISSA KOBAYASHIのショーを、とくと見よッ!
「はぁっぴばぁすでぃー…………とぅゆぅ!はぁっぴばぁぁすでー!でぃーあ浅尾っちぃぃぃ~……」
ヨネはおれの歌に合わせて華麗なステップを踏み、くるりとターンした後、浅尾っちの前に愛情しぼりたてミックスジュースを差し出した。
ふふふ、浅尾っちが驚い……とらんな。相変わらず無表情や。ヒデの方がポカーンとしとるやんけ。
「はぁっぴばぁすでぃー……とぅぅぅゆぅぅぅぅ」
最後はヨネと2人でターンして、美しいハーモニー!どや!決まったッ!
……せやけど、浅尾っちの表情はまったく変わらへん。そして少しの間を置いて、大きなため息をついた。
「長岡、お前……個人情報バラすなよ」
「ご、ごめん。話の流れで……」
「まぁいいけどさ……」
「浅尾っちー!19歳おめでとうやでー!」
「おめでとうやでー浅尾きゅーん!」
おれとヨネは隠し持っていたクラッカーを鳴らして、浅尾っちの19歳を盛大に祝福した。
クラッカーから飛び出た色とりどりの紙テープが、浅尾っちとヒデに降りかかる。ヒデは苦笑しながら、そして浅尾っちは無表情のまま、静かに紙テープを払い落とした。
ヒデは若干オドオドしながら、外のテラス席へ浅尾っちを誘導した。よし、所定の位置についたな。グッジョブやでヒデ!
おれはヨネに目配せをして頷いた。PASSION and LOVE大作戦……いよいよスタートやッ!
「で?相談ってなんだよ」
「えぇっと…………こ、この前“洗い”を試してみたんだけど、いまいちしっくりこなくて……その……」
ヒデが必死に会話を繋げようとしとる。浅尾っちを引き留めるには絵の話が一番やしな。
ちなみに“洗い”っちゅーのは日本画の技法のひとつで、塗った岩絵の具をお湯で落とすことや。全部が落ちるんやのうて、ええ感じに残るさかい、洗いを多用しとる作家も多い。色に変化をつけるために、おれもようやっとるで。
「しっくりこねぇって、どんな風に?」
さすが浅尾っち。真剣にヒデの話を聞いてやっとる。なんやかんや言うても友達思いなんやなぁ……って、胸キュンしとる場合ちゃうわ。完成した“愛情しぼりたてミックスジュース”を浅尾っちに献上せねばッ!
ヨネがトレイに2つのミックスジュースを置き、おれはおもむろにアコースティックギターを取り出した。さぁ、ちびっとスペシャルな時間のはじまりやで!
「……はぁっぴばぁすでぃー……とぅーゆぅー!」
美声を響かせながら適当にギターをかき鳴らし、ヨネとともに浅尾っちのテーブルへ近づく。ちなみにBirthdayのthの発音は、上下の前歯で舌先を挟むようにするんやで。覚えときや。
ちょうど昼メシ時。適度にギャラリーがおって、燃えるシチュエーションや。めっちゃ注目集めとるでぇ!京都が産んだエンターテイナーISSA KOBAYASHIのショーを、とくと見よッ!
「はぁっぴばぁすでぃー…………とぅゆぅ!はぁっぴばぁぁすでー!でぃーあ浅尾っちぃぃぃ~……」
ヨネはおれの歌に合わせて華麗なステップを踏み、くるりとターンした後、浅尾っちの前に愛情しぼりたてミックスジュースを差し出した。
ふふふ、浅尾っちが驚い……とらんな。相変わらず無表情や。ヒデの方がポカーンとしとるやんけ。
「はぁっぴばぁすでぃー……とぅぅぅゆぅぅぅぅ」
最後はヨネと2人でターンして、美しいハーモニー!どや!決まったッ!
……せやけど、浅尾っちの表情はまったく変わらへん。そして少しの間を置いて、大きなため息をついた。
「長岡、お前……個人情報バラすなよ」
「ご、ごめん。話の流れで……」
「まぁいいけどさ……」
「浅尾っちー!19歳おめでとうやでー!」
「おめでとうやでー浅尾きゅーん!」
おれとヨネは隠し持っていたクラッカーを鳴らして、浅尾っちの19歳を盛大に祝福した。
クラッカーから飛び出た色とりどりの紙テープが、浅尾っちとヒデに降りかかる。ヒデは苦笑しながら、そして浅尾っちは無表情のまま、静かに紙テープを払い落とした。