小林、藝大行くってよ
「尊敬と興味かぁー分かる分かるぅー」
「ヨネは浅尾っちに対してLOVEはないんか?」
「LOVEじゃないよぉー! 確かにぃー浅尾きゅんってイケメンでスタイルよくてかっこいいけどー私はスポーツマン風の爽やかな人が好きなんだよねぇー。それに最近、ちょっと気になる人がいてぇ……」
えへへ、と頬を赤らめるヨネ。
聞けばバイト先のコーヒーショップによく来るサラリーマンに、ほのかな恋心を抱いとるらしい。いつも爽やかな笑顔で「ありがとう、お仕事頑張ってね」と言ってくれるんやて。めっちゃキュンやな!
「ええなぁ! ヒデもLOVEを探さなあかんで!」
「まぁ……縁があればね」
そんな悠長なこと言うてる場合ちゃうやろチェリーボゥイ。しかしまぁ、ヒデはガツガツ行くタイプちゃうしな。しゃーないな。
おれも新しい恋を探さなあかんが、キャンパスライフは始まったばかり。いくらでもチャンスはある!
……と、LOVEの前に課題を終わらせなあかんかった。一気に現実や。
ヒデとヨネはある程度進んどるから、この空きコマは図書館行ったり公園でリフレッシュしたりするらしい。
後れを取っているおれは、ひとりで実習室へと向かった。
静寂に包まれている絵画棟の階段を上がり、3階にある実習室の扉を開ける。するとそこには、やっぱり浅尾っちがおった。
「お疲れ浅尾っち!」
片付けを始めていた浅尾っちは、チラッとだけおれに視線を送る。相変わらず、他の生徒は見当たらん。
「もう、お菊ちゃんの制作終わったんか?」
「終わった」
「みみみみ見してくれ!」
返事を待たずに机を覗き込んだ。
……ああ、やっぱり浅尾っちの絵はすごい。なんちゅー瑞々しい菊なんや。まさに命がそこにある。あかん、泣きそうになってきたで。
「……なぁ。どないしたら、浅尾っちみたく植物が上手に描けるんや?」
思わず訊いていた。
そう。おれは悩んどった。思うように植物が描けへんことに。前回の百合では、結局どう描くのが正解なのか分からんで、筆に迷いがあることを今江教授から指摘されてしもうた。
「百合の時もさんざんやったし、どう描いたらええんやろって……」
「お前が描きたいのは鳥じゃねぇの?」
「せやけど、課題は出されたテーマで描かなあかんやん」
「そりゃ学校だからな。でも目指しているのは、学校で評価される絵じゃねぇだろ」
浅尾っちが、おれの顔を真っすぐ見る。
「どれだけ上手く描こうと努力したって、心から好きで描いてるヤツには勝てねぇよ」
ズドンときた。おれのハートに、めっちゃズドンときたで。
好きの気持ちは努力に勝る。つまり何よりも大事なのは、愛。LOVEっちゅーこっちゃ。
「オレは羨ましいけどな。描きたいものが明確に定まっているお前が」
そう言って、片付けを終えた浅尾っちは実習室を出て行った。
相変わらずの無表情。声にも抑揚はない。せやけどその言葉には、愛がある。めちゃくちゃLOVEに溢れとる。
ああ、なんちゅーかっこええ男なんや。浅尾っちのLOVEで、ブロークンハートが完全に癒えたで。
くそう、失恋の傷を癒すのが男やなんて。なんや癪やけど、やっぱりおれは芸術家なんやな。浅尾っちがおるから、情熱がメラメラ湧き上がってくるんやな。
おれはその後、感涙に咽びながら、お菊ちゃんと向き合った――
「ヨネは浅尾っちに対してLOVEはないんか?」
「LOVEじゃないよぉー! 確かにぃー浅尾きゅんってイケメンでスタイルよくてかっこいいけどー私はスポーツマン風の爽やかな人が好きなんだよねぇー。それに最近、ちょっと気になる人がいてぇ……」
えへへ、と頬を赤らめるヨネ。
聞けばバイト先のコーヒーショップによく来るサラリーマンに、ほのかな恋心を抱いとるらしい。いつも爽やかな笑顔で「ありがとう、お仕事頑張ってね」と言ってくれるんやて。めっちゃキュンやな!
「ええなぁ! ヒデもLOVEを探さなあかんで!」
「まぁ……縁があればね」
そんな悠長なこと言うてる場合ちゃうやろチェリーボゥイ。しかしまぁ、ヒデはガツガツ行くタイプちゃうしな。しゃーないな。
おれも新しい恋を探さなあかんが、キャンパスライフは始まったばかり。いくらでもチャンスはある!
……と、LOVEの前に課題を終わらせなあかんかった。一気に現実や。
ヒデとヨネはある程度進んどるから、この空きコマは図書館行ったり公園でリフレッシュしたりするらしい。
後れを取っているおれは、ひとりで実習室へと向かった。
静寂に包まれている絵画棟の階段を上がり、3階にある実習室の扉を開ける。するとそこには、やっぱり浅尾っちがおった。
「お疲れ浅尾っち!」
片付けを始めていた浅尾っちは、チラッとだけおれに視線を送る。相変わらず、他の生徒は見当たらん。
「もう、お菊ちゃんの制作終わったんか?」
「終わった」
「みみみみ見してくれ!」
返事を待たずに机を覗き込んだ。
……ああ、やっぱり浅尾っちの絵はすごい。なんちゅー瑞々しい菊なんや。まさに命がそこにある。あかん、泣きそうになってきたで。
「……なぁ。どないしたら、浅尾っちみたく植物が上手に描けるんや?」
思わず訊いていた。
そう。おれは悩んどった。思うように植物が描けへんことに。前回の百合では、結局どう描くのが正解なのか分からんで、筆に迷いがあることを今江教授から指摘されてしもうた。
「百合の時もさんざんやったし、どう描いたらええんやろって……」
「お前が描きたいのは鳥じゃねぇの?」
「せやけど、課題は出されたテーマで描かなあかんやん」
「そりゃ学校だからな。でも目指しているのは、学校で評価される絵じゃねぇだろ」
浅尾っちが、おれの顔を真っすぐ見る。
「どれだけ上手く描こうと努力したって、心から好きで描いてるヤツには勝てねぇよ」
ズドンときた。おれのハートに、めっちゃズドンときたで。
好きの気持ちは努力に勝る。つまり何よりも大事なのは、愛。LOVEっちゅーこっちゃ。
「オレは羨ましいけどな。描きたいものが明確に定まっているお前が」
そう言って、片付けを終えた浅尾っちは実習室を出て行った。
相変わらずの無表情。声にも抑揚はない。せやけどその言葉には、愛がある。めちゃくちゃLOVEに溢れとる。
ああ、なんちゅーかっこええ男なんや。浅尾っちのLOVEで、ブロークンハートが完全に癒えたで。
くそう、失恋の傷を癒すのが男やなんて。なんや癪やけど、やっぱりおれは芸術家なんやな。浅尾っちがおるから、情熱がメラメラ湧き上がってくるんやな。
おれはその後、感涙に咽びながら、お菊ちゃんと向き合った――